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ピグーの厚生経済学の感性

ピグーの厚生経済学の感性

ピグーの厚生経済学における「感性」:功利主義と国家の役割

アーサー・セシル・ピグーは、その主著『経済厚生論』(1920年) において、経済学、倫理学、そして政治哲学を融合させ、厚生経済学の基礎を築いた経済学者として知られています。彼の理論の中心には、功利主義に基づく「感性」の概念が存在し、それが国家の役割や政策介入の是非を判断する上で重要な役割を果たしています。

ピグーは、人間の幸福、すなわち「厚生」を、個人が経験する快快と苦苦の総和として捉えました。そして、社会全体の厚生は、個々の成員の厚生の総和によって構成されると考えました。これは、ジェレミー・ベンサムやジョン・スチュアート・ミルによって提唱された古典的な功利主義の考え方と軌を一にするものです。

ピグーは、経済活動の目的は、この社会全体の厚生、すなわち「最大多数の最大幸福」を実現することにあると主張しました。彼は、市場メカニズムは資源配分を効率的に行う上で有効な手段であると認めつつも、市場の失敗によって厚生が損なわれる可能性も指摘しました。

市場の失敗と国家介入の必要性:外部経済効果と所得格差

ピグーは、市場の失敗が生じる主な要因として、外部経済効果と所得格差を挙げました。外部経済効果とは、ある経済主体の活動が、市場を通さずに他の経済主体の厚生に影響を与える現象を指します。例えば、工場の排煙による大気汚染は、周辺住民の健康に悪影響を与える外部経済効果の一例です。

ピグーは、外部経済効果が存在する場合、市場メカニズムだけでは最適な資源配分が実現されず、社会全体の厚生が損なわれると指摘しました。彼は、このような状況においては、政府が課税や補助金などの政策介入を行うことで、外部経済効果を内部化し、厚生を改善できると主張しました。

また、ピグーは、所得格差の拡大も社会全体の厚生を低下させると考えました。彼は、所得の限界効用逓減の法則に基づき、高所得者よりも低所得者の方が、所得の増加による効用が大きいと主張しました。

ピグーは、所得格差を是正するために、政府が累進課税や社会保障制度などを通じて所得再分配政策を実施することを提唱しました。彼は、このような政策介入によって、社会全体の厚生を高めることができると信じていました。

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