Skip to content Skip to footer

ピグーの厚生経済学の光と影

ピグーの厚生経済学の光と影

ピグーの厚生経済学の光

アーサー・セシル・ピグーは、イギリスの経済学者で、ケンブリッジ学派の中心人物の一人であり、近代経済学の成立に大きな影響を与えた人物です。特に、彼の著書『経済学原理』は、20世紀前半の経済学教育に大きな影響を与えました。

ピグーの業績で最も重要なものは、厚生経済学の基礎を築いたことです。彼は、経済学の目的は社会全体の福祉を向上させることであると考え、そのために政府が積極的に介入すべきであると主張しました。この考え方は、当時の自由放任主義的な風潮に一石を投じるものであり、後のケインズ経済学にも大きな影響を与えました。

ピグーは、厚生経済学において、外部経済効果の概念を明確化し、政府による介入の必要性を論じたことで知られています。外部経済効果とは、ある経済主体の活動が、市場メカニズムを通じてではなく、直接的に他の経済主体の厚生に影響を与えることを指します。例えば、工場の排煙による大気汚染は、周辺住民の健康に悪影響を与える外部経済効果です。

ピグーは、このような外部経済効果が存在する場合、市場メカニズムだけでは最適な資源配分が達成されず、政府による介入が必要になると主張しました。具体的には、負の外部経済効果を生み出す活動に対しては課税を行い、正の外部経済効果を生み出す活動に対しては補助金を与えることで、社会全体の厚生を向上させることができるとしました。

ピグーの厚生経済学の影

ピグーの厚生経済学は、その後の経済学の発展に多大な貢献をしました。しかし、その一方で、いくつかの批判も指摘されています。

まず、ピグーの厚生経済学は、功利主義に基づいているという批判があります。功利主義とは、「最大多数の最大幸福」を追求する考え方ですが、個人の権利や自由を軽視する可能性があるという批判があります。例えば、ピグーの理論に従えば、一部の人々の犠牲によって大多数の人々の幸福が増加する場合、その犠牲は正当化されると解釈することも可能です。

次に、ピグーの理論は、政府が常に適切な介入を行うことができると仮定しているという批判があります。しかし、現実には、政府が情報不足や政治的な思惑によって、非効率的な介入を行う可能性も否定できません。政府の失敗の可能性を考慮に入れずに、安易に政府介入を正当化するべきではないという批判もあります。

さらに、ピグーの外部経済効果の分析は、市場メカニズムの限界を過度に強調しすぎているという指摘もあります。市場メカニズムには、価格調整機能以外にも、企業の技術革新や消費者による情報収集など、様々な調整機能が働いています。ピグーは、これらの市場メカニズムの調整機能を十分に評価していなかったという批判があります。

Amazonで詳細を見る

Leave a comment

0.0/5