ピグーの厚生経済学の仕組み

ピグーの厚生経済学の仕組み

ピグーの厚生経済学とは？

アーサー・セシル・ピグー(Arthur Cecil Pigou)は、20世紀初頭に活躍したイギリスの経済学者であり、ケンブリッジ学派の中心人物の一人です。彼は、福祉経済学の分野に多大な貢献をしたことで知られており、その代表作である「The Economics of Welfare」(1920年)は、現代福祉経済学の基礎を築いたと言われています。

外部経済効果と厚生経済学

ピグーの厚生経済学の中心的な概念は、「外部経済効果」です。外部経済効果とは、ある経済主体の活動が、市場メカニズムを通さずに、他の経済主体に影響を与えることを指します。

例えば、工場が汚染物質を排出する場合、その汚染によって周辺住民の健康が害される可能性があります。これは、工場の生産活動が、市場を通じて取引されない形で、周辺住民に負の影響を与えていることを意味し、負の外部経済効果と呼ばれます。

ピグーは、このような外部経済効果が存在する場合、市場メカニズムだけでは資源の最適配分が達成されず、社会全体の厚生が最大化されないことを指摘しました。

政府による介入とピグー税

ピグーは、外部経済効果による市場の失敗を是正するために、政府による介入が必要であると考えました。特に、負の外部経済効果に対しては、政府が課税することで、その活動を抑制するべきだと主張しました。

具体的には、汚染物質を排出する工場に対して、その排出量に応じて課税する「ピグー税」を提唱しました。ピグー税を導入することで、企業は汚染を減らすための技術革新を促進したり、生産量を調整したりするインセンティブを持つことになります。

その結果、汚染物質の排出量が減り、社会全体の厚生が改善されるとピグーは考えました。

ピグーの厚生経済学への批判

ピグーの厚生経済学は、その後の福祉経済学に大きな影響を与えましたが、同時に様々な批判も受けてきました。

例えば、外部経済効果を適切に測定することの難しさや、ピグー税の適切な税率を設定することの困難さなどが指摘されています。また、政府による介入が、必ずしも効率的かつ効果的であるとは限らないという批判もあります。

しかし、ピグーの厚生経済学は、市場の失敗と政府の役割について考える上で、今日でも重要な視点を提供しています。

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