ピグーの「厚生経済学」の翻訳
厚生経済学の定義
経済学の一分野であり、望ましさという観点から、異なる経済状態を比較することを目的とする。ピグーは、厚生経済学は倫理や価値判断を含むため、純粋に科学的な学問ではないと主張した。
経済福祉の測定
ピグーは、経済福祉を測定するための主要な指標として、国民所得を用いた。彼は、他の条件が一定であれば、国民所得の増加は経済福祉の向上につながると論じた。ただし、所得分配の不平等性や外部経済効果の存在など、国民所得以外の要素も経済福祉に影響を与える可能性があることを認めた。
政府の役割
ピグーは、政府が経済福祉を向上させる上で積極的な役割を果たすべきであると主張した。彼は、政府が税金や補助金などの政策手段を用いることで、所得分配の不平等性を是正し、外部経済効果を内部化できると論じた。また、教育や医療への投資など、市場メカニズムだけでは十分に提供されない公共財を提供することも政府の重要な役割であると考えた。
限界効用逓減の法則
ピグーは、厚生経済学の分析において、限界効用逓減の法則を重要な概念として用いた。この法則は、財やサービスの消費量が増加するにつれて、追加的な消費から得られる満足度は減少していくことを示している。ピグーは、この法則に基づき、所得の限界効用は富裕層よりも貧困層の方が高いため、所得の再分配は経済福祉を向上させる可能性があると論じた。
批判と影響
ピグーの厚生経済学は、その後の経済学者から様々な批判を受けている。例えば、厚生経済学が倫理や価値判断を含むという点や、国民所得を経済福祉の主要な指標として用いることに対する批判などがある。しかし、ピグーの業績は、現代の厚生経済学の基礎を築き、政府の経済政策に大きな影響を与えた。