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ヒルファーディングの金融資本論の批評

## ヒルファーディングの金融資本論の批評

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帝国主義論との関連における評価

ヒルファーディングの『金融資本論』は、その後のレーニンの帝国主義論に大きな影響を与えたことで知られています。しかし、ヒルファーディングの分析は、必ずしもレーニンの主張を直接的に支持するものではありませんでした。

#### 資本輸出と帝国主義

ヒルファーディングは、先進資本主義国における過剰資本が、後進国への資本輸出を促進すると論じました。これは、レーニンが帝国主義を「資本主義の最高段階」と定義する際に重要な根拠とした点です。

しかし、ヒルファーディングは資本輸出が必ずしも武力衝突や植民地支配に結びつくとは考えていませんでした。彼は、資本輸出が後進国の経済発展を促し、世界経済を統合する可能性も指摘しています。

#### 金融資本と国家の関係

ヒルファーディングは、金融資本が国家と密接に結びつき、国家権力を利用して自らの利益を追求すると論じました。 しかし、彼は国家を単なる金融資本の「道具」と見なすことはなく、国家が相対的に自律的なアクターとして行動する可能性も認めていました。

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理論的側面からの批判

ヒルファーディングの『金融資本論』は、その後のマルクス経済学に大きな影響を与えましたが、同時に様々な批判も寄せられてきました。

#### 金融資本の定義

ヒルファーディングは、「金融資本」を銀行資本と産業資本の結合として定義しました。 しかし、この定義は、金融資本の多様な形態を捉えきれていないという批判があります。 例えば、現代資本主義においては、投資ファンドやヘッジファンドなど、銀行資本や産業資本の枠組みには収まらない金融機関が大きな影響力を持つようになっています。

#### 経済危機の分析

ヒルファーディングは、過剰蓄積と過少消費が資本主義経済における危機の根本原因であるというマルクスの理論を継承しました。 しかし、彼は金融システムの不安定性が経済危機を引き起こすメカニズムについて、十分な分析を行っていません。 実際、1929年の世界恐慌は、金融システムの崩壊が主要な原因となって発生しました。

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歴史的展開を踏まえた評価

ヒルファーディングの『金融資本論』は、20世紀初頭の資本主義を分析した著作です。 出版から100年以上が経過した現在、彼の分析は時代遅れになった部分も少なくありません。

#### グローバリゼーションの影響

ヒルファーディングは、資本主義が世界経済を統合するプロセスを予見していました。 しかし、彼は現代のようなグローバリゼーションの進展までは予測できませんでした。 グローバリゼーションは、資本移動、貿易、情報通信技術などを通じて、世界経済を劇的に変貌させました。

#### 国家の役割の変化

20世紀後半以降、新自由主義の影響力が高まり、国家の役割は縮小しました。 これは、ヒルファーディングが想定していた国家と金融資本の密接な関係とは異なる状況です。 現代資本主義においては、国家は金融資本の活動を規制する役割を担う一方で、市場メカニズムを重視する傾向にあります。

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