## ヒルファーディングの金融資本論の原点
マルクスの資本論の影響
ルドルフ・ヒルファーディングの主著『金融資本論』は、カール・マルクスの『資本論』を理論的な基礎としています。ヒルファーディング自身、序文において本書を「マルクスの著作の単なる注釈書」と位置付けており、マルクス経済学、特に資本主義経済における資本の運動法則の解明を発展させようとする意図が明確に示されています。
ドイツ資本主義の現実
ヒルファーディングの『金融資本論』は、19世紀末から20世紀初頭にかけてのドイツ資本主義の現実を分析対象としています。この時代、ドイツでは重工業を中心とした資本主義が急速に発展し、それに伴い銀行による企業への資本集中と支配が進行していました。ヒルファーディングは、このようなドイツ資本主義の現実を踏まえ、銀行資本と産業資本の融合による「金融資本」の形成と、その支配構造を分析しました。
オーストリア学派の限界認識
ヒルファーディングは、当時の支配的な経済学派であったオーストリア学派の限界も認識していました。オーストリア学派は、経済現象を主観的な価値判断に基づいて説明しようとする立場をとっていましたが、ヒルファーディングは、資本主義経済の構造的な矛盾や階級対立を捉えるには、客観的な分析が必要であると主張しました。
修正主義論争
ヒルファーディングの『金融資本論』は、当時のドイツ社会民主党内部で展開されていた「修正主義論争」とも深く関わっています。修正主義者は、資本主義の矛盾は徐々に解消され、社会主義への移行は平和的な改革によって達成できると主張していました。これに対し、ヒルファーディングは、金融資本の支配が資本主義の矛盾を一層深刻化させると反論し、社会主義革命の必要性を主張しました。