## ヒルファーディングの金融資本論が扱う社会問題
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資本主義の高度化と金融資本の支配
ルドルフ・ヒルファーディングの『金融資本論』(1910年)は、19世紀末から20世紀初頭にかけての資本主義の新たな発展段階を分析した画期的な著作です。この時期は、自由競争資本主義から独占資本主義への移行期にあたり、生産と資本の集中が進行し、巨大企業が経済を支配するようになっていました。ヒルファーディングはこのような状況下で、銀行資本と産業資本の融合を通じて「金融資本」が形成され、資本主義経済全体を支配するようになると主張しました。
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金融資本による経済の不安定化と恐慌
ヒルファーディングは、金融資本が経済に与える影響として、その不安定化作用を特に重視しました。彼によれば、金融資本は利潤追求のために、実体経済が必要とする以上の資本を供給し、過剰な投資や投機を生み出す傾向があります。これは、バブル経済やその崩壊といった経済の不安定化をもたらし、周期的な恐慌の発生を不可避なものとします。
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金融資本と帝国主義の結びつき
さらにヒルファーディングは、金融資本の発展が帝国主義的な対外進出と密接に結びついていることを明らかにしました。国内市場の飽和と利潤率の低下という問題に直面した金融資本は、海外市場への進出を通じて新たな利潤機会を追求しようとします。これが、植民地獲得競争や帝国主義列強間の対立を激化させる要因の一つとなりました。
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金融資本による社会の階級対立の激化
ヒルファーディングは、金融資本の支配が社会の階級対立を激化させるとも論じました。金融資本は、その巨大な経済力を通じて、労働者階級の搾取を強化し、社会全体の富を少数の資本家階級に集中させます。これは、労働者階級の生活水準の低下や社会不安の増大をもたらし、最終的には資本主義体制そのものを揺るがす可能性を孕んでいます。
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金融資本主義の克服と社会主義への展望
ヒルファーディングは、金融資本主義が内包する諸矛盾を克服するためには、資本主義体制の枠組みを超えた抜本的な変革が必要であると考えました。彼は、生産手段の社会的所有と計画経済に基づく社会主義こそが、金融資本の支配から解放され、経済の不安定化や帝国主義的な対外進出、階級対立のない社会を実現する道筋であると結論付けました。