ヒルティの幸福論の表現
表現の特徴
ヒルティの『幸福論』は、19世紀末から20世紀初にかけてのドイツ語圏でベストセラーとなった自己啓発書です。その表現の特徴としては、平易で率直な言葉遣いが挙げられます。哲学書や倫理学書にありがちな難解な専門用語は避けられ、日常生活で用いられる平易な言葉で、彼の思想が語られています。
具体例
たとえば、幸福を論じる上で重要な概念である「幸福の条件」について、ヒルティは次のように述べています。
> 「幸福の条件は、第一に労働であり、第二に愛であり、第三に苦痛に耐える力である」
ここでも、「労働」「愛」「苦痛」といった、誰にでも理解できる平易な言葉が使われていることがわかります。また、抽象的な議論に終始するのではなく、具体的なエピソードや比喩を交えながら、読者に語りかけるような文体で書かれていることも特徴です。
引用
ヒルティは自身の思想を補強するために、聖書やゲーテ、ニーチェなど、様々な文献からの引用を用いています。特に聖書の引用は多く、彼が敬虔なキリスト教徒であったことがうかがえます。しかし、ヒルティはこれらの引用を単に羅列するのではなく、自身の主張に自然に結びつけることで、説得力を高めている点が注目されます。