パーソンズの社会体系論を読んだ後に読むべき本
ニクラス・ルーマン『社会システム論』
パーソンズの社会システム論を理解した後に読むべき本として、ニクラス・ルーマンの『社会システム論』は非常に示唆に富むでしょう。パーソンズが社会の統合と均衡を重視したのに対し、ルーマンは社会の複雑性と進化に焦点を当て、システム理論を用いて独自の社会観を展開しました。
パーソンズは、社会システムが安定して存続するためには、共通の価値観や規範が必要であると主張しました。彼はAGILスキーマを提示し、社会システムが適応、目標達成、統合、潜在的パターン維持という四つの機能を満たすことで均衡を保つと説明しました。
一方、ルーマンは、近代社会の複雑化に伴い、社会システムはもはや共通の価値観や規範によって統合されることはできないと主張しました。彼は、社会システムをコミュニケーションからなるオートポイエーシスなシステムとして捉え、システム内部と外部の環境との差異に基づいてコミュニケーションが生成されると説明しました。ルーマンによれば、社会システムは、政治、経済、法律、教育など、機能的に分化したサブシステムから構成され、それぞれのサブシステムは独自のコミュニケーションコードとプログラムに基づいて自律的に運営されています。
このように、パーソンズとルーマンは、社会システムに対する視点や分析方法が大きく異なります。パーソンズは、社会システムの構造と機能を分析する巨視的なアプローチを採用したのに対し、ルーマンは、コミュニケーションを基盤として社会システムの自己組織化と進化を説明するより抽象的なアプローチを採用しました。
『社会システム論』を読むことで、パーソンズの社会システム論に対する批判的な視点を得ると同時に、複雑化する現代社会を理解するための新たな視点を獲得することができます。ルーマンの理論は難解とされていますが、パーソンズの理論を踏まえることで、その理解を深めることができるでしょう。特に、以下のような点に注目して読むことをおすすめします。
* **システムのオートポイエーシス:** ルーマンは、社会システムを自己言及的かつ自己創出的であると捉えました。これは、パーソンズのAGILスキーマのような外部からの機能要請ではなく、システム自身が内部のコミュニケーションを通じて自己を維持・発展させていくという点で大きく異なります。
* **コミュニケーションと意味:** ルーマンは、社会システムをコミュニケーションのネットワークとして捉え、意味の生成と処理が社会システムの進化を促すと考えました。これは、パーソンズが重視した共通価値観や規範といった要素よりも、コミュニケーションの動態に焦点を当てた分析と言えるでしょう。
* **機能分化:** ルーマンは、近代社会が複雑化するにつれて、システムは機能的に分化していくと主張しました。これは、パーソンズが想定したような単一の統合原理ではなく、それぞれのサブシステムが独自の論理で発展していくことを示唆しています。
『社会システム論』は、社会学だけでなく、哲学、政治学、経済学など、幅広い分野に影響を与えた重要な著作です。パーソンズの社会システム論を批判的に検討し、現代社会の複雑性を理解するための一つの視座を提供してくれるでしょう。