## パーソンズの社会体系論の普遍性
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パーソンズの社会体系論における普遍性志向
タルコット・パーソンズは、その主著である『社会体系論』(1951年)において、複雑で変化の激しい社会現象を説明するための包括的な理論体系を構築しようと試みました。彼は、社会というものを、相互に関連し合い、機能的に統合された複数の部分からなるシステムとして捉えました。そして、このシステムの維持と均衡を保つためのメカニズムを分析することに重点を置きました。
パーソンズは、あらゆる社会が直面する共通の課題として、**AGIL**と呼ばれる4つの機能的要件を提示しました。
* **適応(Adaptation)**: 社会システムは、外部環境から資源を獲得し、それをシステムのニーズに合わせて変換する必要があります。
* **目標達成(Goal Attainment)**: 社会システムは、目標を設定し、それを達成するための資源を動員する必要があります。
* **統合(Integration)**: 社会システムは、その構成要素間の関係を調整し、システム全体のまとまりを維持する必要があります。
* **潜在的パターン維持(Latency of Pattern Maintenance)**: 社会システムは、その基本的価値観や規範を維持し、次世代に伝達する必要があります。
パーソンズは、これらの機能的要件が、あらゆる社会において、その規模や複雑さの程度に関わらず、普遍的に存在すると主張しました。そして、それぞれの要件に対応するサブシステム(経済、政治、社会共同体、文化)が分化し、相互に作用することで、社会システム全体の維持と均衡が実現されると説明しました。
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社会進化論における普遍主義的視点
パーソンズは、社会進化論の立場から、社会が単純なものから複雑なものへと進化していく過程を説明しました。彼は、社会進化の主要なメカニズムとして「分化」と「統合」を挙げました。社会が複雑化するにつれて、新たな機能的要件に対応するために、システムの分化が進みます。そして、分化したサブシステム間の相互依存関係が高まるにつれて、新たな統合メカニズムが必要となります。
パーソンズは、この進化の過程は、すべての社会に共通するものであり、特定の社会に限定されたものではないと考えました。彼は、原始的な社会から近代社会への移行を、機能的分化と統合の発展という観点から説明しました。
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パーソンズ理論における普遍性の限界
パーソンズの社会体系論は、社会現象を包括的に説明しようとする壮大な試みでしたが、その普遍性志向に対しては、多くの批判が寄せられています。主な批判点は以下の通りです。
* **西洋中心主義**: パーソンズの理論は、西洋社会の経験に基づいて構築されており、他の文化や社会にそのまま適用するには無理があるという批判があります。
* **静態的**: パーソンズの理論は、社会システムの維持と均衡に重点を置きすぎており、社会変動や葛藤を十分に説明できないという批判があります。
* **機能主義的偏見**: パーソンズの理論は、社会のあらゆる側面を、システム全体の維持に貢献するものとして説明しており、権力関係や不平等を軽視しているという批判があります。
これらの批判にもかかわらず、パーソンズの社会体系論は、社会学の古典として、現代社会を理解するための重要な視点を提供しています。特に、社会を複雑なシステムとして捉え、その機能と構造を分析するという視点は、現代社会学においても重要な役割を果たしています。