パレートの社会学概論を読む前に

ヴィルフレド・パレート（1848-1923）は、イタリアの経済学者、社会学者、哲学者です。彼の思想は、経済学から社会学、政治学にまで及び、20世紀初頭のヨーロッパ社会に大きな影響を与えました。

パレートは、フランス革命後の激動の時代を生きました。産業革命の進展、都市化の加速、社会主義運動の高まりなど、当時のヨーロッパ社会は大きな変革の渦中にありました。パレートは、このような社会状況を目の当たりにし、伝統的な社会秩序が崩壊していく中で、新しい社会秩序の原理を探求しようとしました。

パレートの社会学は、人間の非合理的な行動に焦点を当てている点が特徴です。彼は、人間は感情や本能によって行動することが多く、合理的な思考だけで行動しているわけではないと考えました。この考え方を基に、パレートは、「論理的行動」と「非論理的行動」という二つの概念を提唱しました。

「論理的行動」とは、目的と手段が合理的に結びついている行動のことです。一方、「非論理的行動」とは、目的と手段が合理的に結びついていない行動のことです。パレートは、人間の行動の大部分は「非論理的行動」であると主張し、社会現象を理解するためには、「非論理的行動」を分析することが重要であると考えました。

また、パレートは、「エリート」と「大衆」という概念を用いて、社会の構造を分析しました。彼は、社会には常に支配するエリートと、支配される大衆が存在すると考えました。そして、エリートは、知性や能力において大衆よりも優れているため、社会を支配する資格があると主張しました。

パレートは、もともと経済学者として活動しており、経済学の知識は、彼の社会学を理解する上でも重要です。特に、彼の代表作である「経済学教程」や「効用」の概念などは、社会学にも大きな影響を与えています。

パレートの社会学は、今日でも多くの議論を呼んでいます。彼の思想は、時に、エリート主義や保守主義と結びつけられることもあります。そのため、「社会学概論」を読む際には、彼の主張を鵜呑みにするのではなく、批判的な視点を持つことが重要です。