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パレートの社会学概論の位置づけ

## パレートの社会学概論の位置づけ

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**刊行と時代背景**

ヴィルフレド・パレートの主著『社会学概論』(Trattato di sociologia generale)は、1916年にイタリアで初版が刊行されました。この時代、ヨーロッパは第一次世界大戦の渦中にあり、資本主義の矛盾や社会主義運動の高まりなど、社会不安が増大していました。伝統的な社会秩序や価値観が揺らぎ、新しい社会理論の登場が求められていた時代背景の中で、『社会学概論』は発表されました。

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**従来の社会学との関係**

パレートは、当時の支配的な社会学であったオーギュスト・コントの実証主義 sociology やエミール・デュルケームの社会学を批判的に継承していました。コントやデュルケームが社会の進歩や秩序を重視したのに対し、パレートは社会を、支配層と被支配層の対立と循環によって説明しようとしました。これは、社会の静的な側面だけでなく、動的な側面をも捉えようとする試みでした。

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**方法論:論理的行為と非論理的行為**

『社会学概論』の特徴の一つに、パレート独自の社会分析の方法論が挙げられます。彼は人間の行為を、「論理的行為」と「非論理的行為」に厳密に区別しました。論理的行為とは、目的と手段の関係が論理的に整合性を持っている行為を指し、経済活動などが該当します。一方、非論理的行為は、目的と手段の論理的関連性が希薄で、感情や衝動、習慣などに基づいて行われる行為を指します。パレートは、社会現象の多くは非論理的行為によって引き起こされると考え、そのメ커ニズムを解明しようとしました。

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**エリート論と循環論**

『社会学概論』の中心的な概念として、「エリート」と「循環」があります。パレートは、あらゆる社会において、能力や資質に優れた少数者である「エリート」が支配層を形成すると主張しました。そして、歴史はエリートの交代劇、すなわち「循環」の歴史であるとしました。彼は、支配するエリートは時間とともに堕落し、新興エリートによって取って代わられるという循環論を展開しました。

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**影響と評価**

『社会学概論』は、発表当初から賛否両論を巻き起こし、その後の社会科学に大きな影響を与えました。特に、エリート論は、政治学や組織論の分野で多くの議論を呼びました。一方で、パレートの理論は、その非論理的行為の重視や循環論の決定論的な側面などから、批判を受けることも少なくありませんでした。しかし、20世紀前半のファシズムの台頭を予見したと言われるなど、現代社会にも通じる示唆に富んだ社会分析として、現在もなお評価されています。

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