## パラケルススの医学論の案内
### 1. パラケルススとは？
パラケルスス（1493-1541）は、本名をテオフラストゥス・フィリップス・アウレオルス・ボンバストゥス・フォン・ホーエンハイムという、スイスの医師、錬金術師、占星術師、神秘思想家です。彼は中世の医学・科学・哲学に革命をもたらした人物として知られています。
### 2. パラケルススの医学論の特徴
パラケルススの医学論は、中世の医学の権威であったガレノス医学を激しく批判し、新しい医学理論を打ち立てた点に特徴があります。彼の医学論は、大きく以下の3点にまとめられます。
* **医学における経験と観察の重視:** パラケルススは、ガレノス医学のように古代の権威に盲目的に従うのではなく、医師自らが自然を観察し、経験を通して真実を追求することを重視しました。彼は「医者にとって真の師は自然である」と述べています。
* **錬金術と医学の融合:** パラケルススは、錬金術を単なる金属変換術ではなく、物質の精妙な操作を通して人間の病気を治療する技術と捉えました。彼は鉱物や植物から精製した医薬品を用いた治療法を開発し、近代薬学の基礎を築きました。
* **宇宙と人間の照応関係:** パラケルススは、宇宙をマクロコスモス、人間をミクロコスモスと捉え、両者が密接な照応関係にあると考えました。彼は病気の原因を、この宇宙的な調和の乱れに求め、星の影響や錬金術的な解釈を交えながら病気の診断と治療を行いました。
### 3. パラケルススの主要な著作
パラケルススの医学論は、多数の著作に断片的に記されています。その中でも主要な著作として、以下のものが挙げられます。
* **『パラグラヌム』（Paragranum）**: パラケルススの医学論の基礎を築いた書。医学の定義、病気の原因、治療法などについて論じている。
* **『大外科書』（Die grosse Wundarznei）**: 外科手術や傷の治療に関する書。当時の一般的な治療法を批判し、新しい治療法を提案している。
* **『隠された病気について』（Von den unsichtbaren Kranckheiten）**: 精神疾患や心身症など、目に見えない病気について論じた書。当時の医学では無視されていた分野の先駆的な研究として知られる。
### 4. パラケルススの影響
パラケルススの医学論は、当時の医学界に大きな衝撃を与え、多くの支持者と批判者を生み出しました。彼の思想は、近代医学、薬学、化学の発展に大きな影響を与え、現代でもホリスティック医学や代替医療の分野で注目されています。