## パラケルススの医学論に匹敵する本
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アンドレアス・ヴェサリウス『ファブリカ』 (De humani corporis fabrica libri septem) (1543年)
医学史上、パラケルススの革命的な思想に匹敵する影響を与えた書物として、アンドレアス・ヴェサリウスの解剖学書『ファブリカ』が挙げられます。1543年に出版されたこの書物は、古代ギリシャの医学者ガレノスの権威に挑み、人体解剖に基づいた詳細かつ正確な観察記録によって、それまでの医学の常識を覆しました。
ヴェサリウスは自ら人体解剖を行い、骨格系、筋肉系、神経系など、人体の構造を精密な図版とともに解説しました。彼の観察眼は鋭く、ガレノスの記述に誤りがあることを発見し、それを指摘しました。例えば、ガレノスは人間の肝臓は猿のように複数の葉を持つと記述していましたが、ヴェサリウスは人間の肝臓は一枚であることを確認し、ガレノスの誤りを訂正しました。
『ファブリカ』は医学界に大きな衝撃を与え、ガレノス医学からの脱却を促す転換点となりました。ヴェサリウスの業績は、医学が権威ではなく、観察と経験に基づく近代科学へと進む道を切り開いた点で、パラケルススの思想と共通する革新性を持ち合わせています。