## パスカルの「パンセ」の思想的背景
1.17世紀フランスの思想的状況
パスカルが活躍した17世紀フランスは、宗教改革や三十年戦争を経て、中世的な価値観が揺らぎ、新しい思想が台頭してきた時代でした。 ルネサンス期に始まった人間中心主義は、神中心的な中世の価値観を相対化し、人間の理性や経験の重要性を高めました。 一方で、宗教改革はカトリック教会の権威を揺るがし、プロテスタント諸派が生まれて宗教対立が激化しました。
2.懐疑主義の台頭
このような時代背景の中で、モンテーニュに代表される懐疑主義が生まれました。 懐疑主義は、人間の理性には限界があり、絶対的な真理を認識することは不可能であると主張しました。 これは、あらゆるものを疑うことから始めようとしたデカルトの合理主義とは対照的な立場でした。
3. Jansenism(ジャンセニズム)の影響
パスカルは、厳格なカトリックの一派であるジャンセニズムの影響を受けました。 ジャンセニズムは、人間の原罪を強く強調し、神の恩寵による救済を説きました。 また、禁欲的な生活態度や、聖書研究を重視しました。 パスカルは、ジャンセニストの中心地であったポール・ロワイヤル修道院と深く関わり、そこで彼の思想は形作られていきました。
4.科学革命の影響
17世紀は、コペルニクス、ガリレオ、ニュートンといった科学者たちによって、科学革命が起こった時代でもありました。 天動説から地動説への転換など、従来の世界観を覆すような発見が相次ぎました。 パスカル自身も、数学や物理学の分野で優れた業績を残しており、科学的な思考法は彼の思想にも大きな影響を与えています。