パシュカーニスの法の一般理論とマルクス主義の対極
パシュカーニスと対極に位置する立場
パシュカーニスの「法の一般理論とマルクス主義」は、法を資本主義社会特有の現象と捉え、商品交換の形式に還元できるものと主張しました。この立場は、法の階級性を鋭く指摘し、ソビエト法学に大きな影響を与えました。
しかし、パシュカーニスは、国家の消滅と共に法もまた消滅するという極端な立場をとり、社会主義法や国際法を軽視する傾向にありました。この点において、パシュカーニスとは異なる見解を示した、あるいは対極に位置すると解釈できる法理論や思想は数多く存在します。
具体的な対極の例
#### 1. ゲオルグ・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲルの法哲学
ヘーゲルは、法を理念の現実態としての「客観的精神」と捉え、歴史的発展の産物として理解しました。ヘーゲルにとって、法は単なる階級支配の道具ではなく、自由を実現するための不可欠な要素でした。パシュカーニスが法を資本主義社会特有のものと見たのに対し、ヘーゲルは法をより普遍的な、理性的な原理に基づくものと捉えていた点で対照的です。
#### 2. 自然法思想
自然法思想は、法の根拠を人間の理性や自然秩序に求め、時代や社会を超越した普遍的な法原理の存在を主張します。パシュカーニスは、自然法思想をブルジョアジーのイデオロギーとして批判し、法の相対性を強調しました。
パシュカーニスへの批判
パシュカーニスの理論は、その後の社会主義法の発展や国際関係の複雑化などを前に、現実との乖離を指摘されることになります。特に、社会主義社会における法の役割を軽視した点、国際法を資本主義の枠組み内に押し込めてしまった点は、その後の歴史的展開を踏まえると、大きな批判点と言えるでしょう。
結論
パシュカーニスの法理論は、法の経済的基盤と階級性を明らかにしたという点で重要な貢献を果たしました。しかし、法を資本主義社会にのみ現れる現象と限定的に捉えたこと、社会主義法や国際法を軽視したことは、その後の歴史的展開を踏まえると、批判的な検討が必要な点と言えるでしょう。パシュカーニスの理論は、ヘーゲル法哲学や自然法思想など、法をより普遍的なものと捉える立場と対比することで、より多角的に理解することができます。