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パシュカーニスの法の一般理論とマルクス主義を読む

## パシュカーニスの法の一般理論とマルクス主義を読む

パシュカニスの生きた時代背景と本書の位置付け

エフゲニー・パシュカニス(1891-1937)は、ロシア革命を経験し、ソビエト政権下で法務人民委員部の要職を歴任した、ソビエト法学の創始者の一人として知られる法学者です。彼の主著である『法の一般理論とマルクス主義』(1924)は、マルクス主義の唯物史観に基づいて資本主義社会における法の本质を鋭く分析した著作として、出版当時から世界中のマルクス主義者や法学者に大きな影響を与えました。

この著作は、ロシア革命後の混乱と熱狂の中で、新しい社会主義法の理論的基礎を築こうとするパシュカニスの情熱と、マルクス主義に基づいて法というものを根底から捉え直そうとする彼の学問的探求心が交錯した作品と言えるでしょう。

本書の構成と主要な論点

『法の一般理論とマルクス主義』は、全5章から構成されています。

* **第1章 序論:法の理論における方法論の問題**
* **第2章 法の一般理論における課題**
* **第3章 法的主体の理論**
* **第4章 法と国家の凋落に関する問題**
* **第5章 法の一般理論の諸問題**

本書では、マルクス主義の唯物史観を基盤としつつ、カントやヘーゲルなどのドイツ古典哲学、ブハーリンやレーニンなどのマルクス主義理論、さらには当時の最新の法学理論を網羅的に参照しながら、パシュカニス独自の法理論が展開されています。

パシュカニスの主張の中核をなすのは、**法は資本主義社会特有の現象**であり、**商品交換の関係と不可分に結びついている**という点です。彼は、法的主体という概念を分析することによって、それが自由で平等な個人という虚構を前提としたブルジョア社会特有の産物であることを明らかにしようと試みます。

さらに、パシュカニスは、国家は階級対立を媒介する機構であり、法はその国家権力を正当化するイデオロギー装置として機能していると主張します。そして、共産主義社会では、国家とともに法もまた「凋落」していくと予言しました。

本書の現代における意義と評価

『法の一般理論とマルクス主義』は、出版から100年近く経った現在でも、法と社会の関係について考える上で示唆に富む議論を含んでいます。

特に、グローバリゼーションの進展に伴い、国家の役割が変化し、法のあり方が問われている現代において、パシュカニスの国家と法に対する批判的な視点は、改めて注目されています。

ただし、本書は難解な文章で書かれており、マルクス主義や法学に関する一定の知識を前提としているため、読解には相当な努力を要します。また、パシュカニスの主張は、後の社会主義法学の発展の中で批判的に検討され、その一部は修正を余儀なくされています。

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