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パシュカーニスの法の一般理論とマルクス主義の思考の枠組み

## パシュカーニスの法の一般理論とマルクス主義の思考の枠組み

パシュカーニスは、彼の主著『法の一般理論とマルクス主義』(1924年) において、マルクス主義の唯物史観に基づき、資本主義社会における法の役割を分析しました。彼の思考の枠組みは、以下の要素によって特徴付けられます。

1. 法の形態と社会的関係

パシュカーニスは、法の分析を出発点とするのではなく、まず社会的関係の分析から始めました。彼は、法は独立した実体ではなく、特定の社会的関係の表現形態であると主張しました。

彼は、社会における生産関係が、人々の間の法的関係を決定すると考えました。 つまり、法は支配的な経済体制、特に資本主義における生産関係を反映し、正当化するものと見なされます。

2. 商品交換と法的形式

パシュカーニスは、資本主義社会を特徴付けるのは商品交換であると指摘しました。 そして、この商品交換が、法的形式の発生と発展の基盤となっていると論じました。

彼は、商品所有者間の関係が、自由、平等、契約などの法的概念を生み出すと説明しました。 しかし、これらの法的概念は、資本主義社会における現実の不平等を覆い隠し、正当化する役割を果たすと彼は主張しました。

3. 法的主体の抽象性

パシュカーニスは、法的主体という概念を批判的に分析しました。 彼は、法的主体は、具体的な人間からその社会的、経済的な差異を捨象し、抽象化された存在であると指摘しました。

この抽象化は、資本主義社会における階級関係を覆い隠し、あたかもすべての人々が法の前に平等であるかのような幻想を生み出すと彼は主張しました。

4. 法のイデオロギー的機能

パシュカーニスは、法が資本主義社会においてイデオロギー的な機能を果たすと論じました。 法は、支配階級の利益を保護し、被支配階級の搾取を正当化する役割を果たします。

彼は、法が、自由、平等、正義といった普遍的な価値を掲げることで、現実の不平等や搾取を不可視化すると主張しました。

5. 社会主義における法の「死滅」

パシュカーニスは、マルクスの国家死滅論に基づき、社会主義社会においては、法は徐々にその役割を失い、最終的には「死滅」すると予測しました。

彼は、階級対立のない社会では、法による強制や支配は不要となり、人々は自由に、平等に共存できると考えました。

パシュカーニスの法理論は、マルクス主義の観点から法を体系的に分析した先駆的な業績として評価されています。 彼の洞察は、法と経済の関係、法のイデオロギー的機能、そして社会主義における法の将来に関する議論に大きな影響を与えました。

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