パシュカーニスの法の一般理論とマルクス主義に影響を与えた本
エンゲルス著「家族・私有財産・国家の起源」の影響
パシュカーニスは、その著作の中で、エンゲルスの「家族・私有財産・国家の起源」から大きな影響を受けています。「家族・私有財産・国家の起源」は、マルクスの唯物史観に基づき、家族、私有財産、国家といった社会制度の起源と発展を歴史的に分析した書です。エンゲルスは、これらの制度が永遠不変のものではなく、特定の物質的条件と生産様式の下で生まれ、発展してきたことを明らかにしました。
パシュカーニスは、エンゲルスが「家族・私有財産・国家の起源」で示した歴史的唯物論的分析方法を法の領域にも適用しようとしました。彼は、法というものが、特定の社会経済体制の産物であり、支配階級の利益を反映したものと見なしました。パシュカーニスにとって、法は、資本主義社会における階級対立を隠蔽し、プロレタリアートの搾取を正当化するイデオロギー装置として機能していました。
特に、「家族・私有財産・国家の起源」で展開された「国家の死滅」という概念は、パシュカーニスの法理論に大きな影響を与えました。エンゲルスは、国家は階級対立の産物であり、階級社会が消滅すれば国家もまた不要なものとなると主張しました。パシュカーニスは、このエンゲルスの主張をさらに発展させ、共産主義社会においては、法もまた国家と共に消滅すると考えました。なぜなら、共産主義社会では、階級対立が解消され、法によって社会秩序を維持する必要性がなくなるからです。
「家族・私有財産・国家の起源」は、パシュカーニスの法理論の基礎となる歴史的唯物論的視点を提供するだけでなく、彼の法に対する批判的な視点を形成する上でも重要な役割を果たしました。パシュカーニスの法理論は、エンゲルスの思想を土台としつつ、独自の理論的展開を加えることによって、マルクス主義法学の発展に大きく貢献しました。