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バーナード・クリックの政治の弁証の選択

## バーナード・クリックの政治の弁証の選択

バーナード・クリックは、「政治の弁証」の中で、政治を理解するための主要なアプローチとして、政治を「権力への欲求」と捉える見方と、「共通善の実現」と捉える見方の二つを提示しています。クリックは、これらの見方が政治思想史において対立しながらも、相互に補完し合いながら発展してきたことを論じています。以下では、クリックが提示する二つの見方について、それぞれ詳しく見ていきます。

1. 政治を「権力への欲求」と捉える見方

クリックは、政治を「誰が何を、いつ、どのように得るか」という資源配分の問題として捉え、その根底に権力への欲求があると主張する思想家たちの系譜を辿ります。この見方において、政治とは、限られた資源や権力を巡る、個人や集団間の闘争の場となります。

この見方を代表する思想家として、クリックは、次のような人物を挙げています。

* **トマス・ホッブズ**: 人間は自己保存のために絶えず権力を求め続け、自然状態では「万人の万人に対する闘争」に陥ると考えたホッブズは、国家の役割を、個人の自由を制限することで秩序と安全を保障することだとしました。
* **ニッコロ・マキャベリ**: 君主の目的は権力の獲得と維持であり、そのためにはあらゆる手段を尽くすべきだと説いたマキャベリは、政治を道徳から切り離して考える必要性を強調しました。
* **ラインホルト・ニーバー**: 人間の罪深さを強調し、理想主義的な政治思想に批判的な立場をとったニーバーは、権力闘争の現実を直視し、国際政治においては力による均衡が不可欠だと主張しました。

これらの思想家は、それぞれ異なる時代や文脈の中で、独自の政治思想を展開しました。しかし、彼らに共通するのは、政治を権力闘争の側面から分析し、その現実的な側面を重視している点です。

2. 政治を「共通善の実現」と捉える見方

一方、クリックは、政治を単なる権力闘争ではなく、共通善を実現するための営みとして捉える見方も存在することを指摘します。この見方において、政治とは、市民が協力してより良い社会を築き上げるための手段となります。

クリックは、この見方を代表する思想家として、次のような人物を挙げています。

* **プラトン**: 哲人王による理想国家を構想したプラトンは、正義や知恵といった普遍的な価値に基づいた政治の実現を目指しました。
* **アリストテレス**: 人間を「ポリス的動物」と定義し、共同体の中で倫理的に生きることを重視したアリストテレスは、政治 participation を通じて市民が徳を涵養し、幸福を実現できると考えました。
* **ジャン・ジャック・ルソー**: 社会契約論を展開し、人民主権を唱えたルソーは、一般意志に基づいた政治の実現によって、個人の自由と共同体の秩序を両立できると考えました。

これらの思想家は、政治を、単なる個人の利益や権力の追求を超えた、より高次の目的を持つものとして捉えています。彼らは、共通善を実現するための政治の役割を重視し、その実現のために積極的に努力する必要性を訴えました。

クリックは、「権力への欲求」と「共通善の実現」という二つの見方が、政治を理解するための両輪であると主張します。政治は、常にこの二つの側面の間で揺れ動いており、どちらか一方だけで理解することはできません。クリックは、政治を分析する際には、この二つの見方のどちらにも偏ることなく、両者の相互作用を常に意識することが重要だと説いています。

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