## バーナード・クリックの政治の弁証の世界
###
クリックの政治観
バーナード・クリックは、政治を**必然的な悪**と捉えていました。これは、人間の本質が自己中心的で権力欲に取りつかれているため、いかなる社会においても対立や争いは避けられないと考えたからです。クリックは、この人間観を基に、政治とは「可能な限り最小の悪」を実現するための手段であると主張しました。
###
政治における弁証法
クリックは、政治における変化や発展を説明するために、**弁証法**の概念を用いました。弁証法とは、あるテーゼ（命題）に対して、それと対立するアンチテーゼ（反命題）が生じ、両者のせめぎ合いの中から新たなジンテーゼ（統合された命題）が生まれるという過程を指します。
クリックは、この弁証法的なプロセスが政治においても同様に作用すると考えました。例えば、ある政治体制（テーゼ）に対して、必ずやそれに対する反対勢力（アンチテーゼ）が出現し、両者の対立を経て、新たな政治体制（ジンテーゼ）が誕生するというわけです。
###
政治における均衡
クリックは、政治における安定は、**様々な勢力間の均衡**によって保たれると考えました。彼は、いかなる政治体制も、完全な正義や平等を実現することは不可能であり、常に何らかの欠陥や矛盾を抱えていると主張しました。重要なのは、こうした欠陥を最小限に抑え、社会全体の利益を最大化することです。
クリックは、この目的を達成するためには、異なる価値観や利害を持つ様々な政治勢力が、互いに牽制し合いながら均衡を保つことが重要であると考えました。