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バルザックの幻滅に影響を与えた本

バルザックの幻滅に影響を与えた本

ジャン=ジャック・ルソーの『告白』の影響

オノレ・ド・バルザックの傑作『幻滅』は、19世紀初頭のフランス社会を痛烈に風刺し、その腐敗、野心、欺瞞を描き出しています。この作品に影響を与えた文学作品は数多くありますが、ジャン=ジャック・ルソーの自伝的作品『告白』は、特に重要な位置を占めています。バルザック自身、ルソーの作品を高く評価しており、その影響は『幻滅』のテーマ、登場人物、物語構造の随所に見て取ることができます。

社会の偽善と腐敗の暴露

ルソーの『告白』は、当時の社会規範や道徳観に疑問を投げかけ、人間の偽善や社会制度の腐敗を容赦なく暴露したことで、大きな論争を巻き起こしました。バルザックの『幻滅』もまた、当時のフランス社会、特にパリの上流階級における腐敗や欺瞞を赤裸々に描き出しており、ルソーの鋭い社会批判の精神を受け継いでいることがうかがえます。

両作品とも、社会的地位や名声、富といった外的な価値観に支配された人々の空虚な内面を描き出し、真の幸福や人間らしさを追求することの難しさを問いかけています。ルソーは、自然状態における人間は本来善であり、社会によって堕落させられると主張しました。バルザックもまた、純粋な心を持った青年が、社会の悪影響によって次第に野心や欲望に染まっていく様を描き、ルソー的な人間観を反映させています。

自己分析と内面の葛藤の描写

ルソーの『告白』は、自身の内面を赤裸々に告白することで、人間の心理や感情の複雑さを描き出した作品としても知られています。バルザックもまた、『幻滅』において、主人公リュシアンの心理描写に重点を置き、彼の野心、挫折、愛、絶望といった複雑な感情を緻密に描写しています。

両作品とも、自己分析の手法を用いることで、人間の心の奥底に潜む矛盾や葛藤を浮き彫りにしています。ルソーは、自分の弱さや醜ささえも隠さずに告白することで、人間存在の真実を追求しようとしました。バルザックもまた、リュシアンの挫折や堕落を通して、人間の弱さや愚かさを容赦なく描き出しています。

物語構造における影響

『告白』は、時系列に沿ってルソー自身の半生を振り返るという、自伝的小説の形式を取っています。『幻滅』もまた、地方都市からパリに出てきた青年リュシアンが、様々な経験を通して社会の現実を知り、挫折していく様を描いており、一種の教養小説、成長物語としての側面を持っています。

このように、両作品は、主人公が様々な経験を通して成長していく過程を描いている点で共通しています。ルソーは、自身の経験を通して、社会と人間の真実を明らかにしようとしました。バルザックもまた、リュシアンの経験を通して、当時のフランス社会における人間関係や権力構造、道徳観などを浮き彫りにしています。

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