## バルザックの幻滅と時間
時間と社会の腐敗
バルザックの「幻滅」は、19世紀初頭のフランス社会における、時間と腐敗の関係を鋭く描いています。作者は、時間の経過が理想主義的な若者をどのようにして幻滅へと導くのかを、主人公リュシアン・シャルドンの経験を通して浮き彫りにします。
時間とリュシアンの変貌
純粋な文学的野心を抱いてパリに出てきたリュシアンは、当初、時間に対して楽観的な見方を抱いています。彼は自身の才能によって名声と富を手に入れ、愛する人と幸せに暮らす未来を夢見ています。
しかし、パリ社会の現実は、リュシアンの理想とはかけ離れたものでした。彼は、出版業界の腐敗、ジャーナリズムの堕落、貴族社会の欺瞞に直面し、次第に幻滅していきます。時間と共に、リュシアンは自身の才能よりも、金や名声、権力の方が重要視される現実を思い知らされます。
時間と社会構造
「幻滅」は、個人のレベルを超えて、時間と社会構造の関係性も描き出しています。当時のフランス社会は、七月革命後の混乱期にあり、古い価値観と新しい価値観が衝突していました。
バルザックは、このような時代の変化の中で、時間そのものが腐敗の要因となり得ることを示唆しています。時間と共に、社会全体のモラルが低下し、人々の欲望が肥大化していく様子が、作品を通して描かれているのです。