バルザックの幻滅
1. 作品の概要
「幻滅」は、フランスの小説家オノレ・ド・バルザックが1837年から1843年にかけて発表した長編小説です。 全3部構成となっており、「二人の詩人の物語」「田舎での生活の光と影」「パリの生活の光と影」という副題がそれぞれ付けられています。
2. あらすじ
物語は、フランス南部の小さな町を舞台に、高潔な理想に燃える青年リュシアン・シャルドンの挫折と成長を描きます。
**第一部「二人の詩人の物語」** では、印刷業を営むダヴィッド・セシャールとその親戚であるリュシアンの交流が描かれます。リュシアンは詩人としての成功を夢見てパリを目指し、ダヴィッドは彼に恋心を抱く姉のイヴォンヌを残してリュシアンと共に旅立ちます。
**第二部「田舎での生活の光と影」** では、リュシアンはパリでの生活に馴染めず、貴族社会の腐敗や文壇の醜悪さに幻滅していきます。一方、ダヴィッドは印刷技術の革新に情熱を注ぎ、成功への道を歩み始めます。
**第三部「パリの生活の光と影」** では、リュシアンは野心的なジャーナリストに変貌し、金と名声を求めて堕落していきます。彼は愛人やパトロンに翻弄され、最終的には自らの才能を腐らせてしまいます。
3. 登場人物
* **リュシアン・シャルドン:** 詩人を志す青年。純粋で繊細な心の持ち主だが、同時に野心家で虚栄心が強い。
* **ダヴィッド・セシャール:** リュシアンの友人であり、印刷工。勤勉で誠実な人物。
* **イヴォンヌ・セシャール:** ダヴィッドの姉。リュシアンに献身的な愛を捧げる。
4. テーマ
* **理想と現実の対立:** 純粋な理想を抱いて上京したリュシアンが、パリの現実社会の厳しさに直面し、挫折していく様子が描かれています。
* **社会の腐敗と人間の欲望:** 貴族社会や文壇における権力争いや金銭欲、虚栄心など、人間の醜い欲望が赤裸々に描かれています。
* **愛と友情:** リュシアンとダヴィッド、イヴォンヌの複雑な三角関係を通して、愛と友情のあり方が問われています。
5. 文体
バルザックは写実主義の旗手として知られ、本作でも詳細な描写力と心理描写を駆使して、当時のフランス社会をリアルに描き出しています。