バブッフの人民宣言の原点
バブッフの思想的背景
フランソワ・ノエル・バブーフ(1760-1797)は、フランス革命期に活躍した革命家、思想家です。彼の思想は、平等主義を基盤とし、私有財産制の廃止と社会経済的な平等の実現を強く訴えました。バブーフの思想は、当時のフランス社会における深刻な貧富の差や社会的不公正に影響を受けて形成されたと言えます。
啓蒙思想の影響
バブーフは、ルソーやモンテスキューといった啓蒙主義思想家たちの影響を強く受けていました。特に、ルソーの「社会契約論」における人民主権の概念や、自然状態における人間の平等性に関する思想は、バブーフの思想に大きな影響を与えました。これらの思想は、バブーフが「人民宣言」において、人民の権利を主張し、平等な社会の実現を訴える根拠となりました。
フランス革命の経験
バブーフは、フランス革命の初期から積極的に活動し、革命の進展に大きな期待を抱いていました。しかし、テルミドール反動を経て、革命の理念が後退し、社会的不平等が改善されない状況を目の当たりにする中で、バブーフは次第に革命への失望を深めていきます。このような経験を通して、バブーフは、真の平等を実現するためには、より抜本的な社会変革が必要であると考えるようになりました。
「平等派」の活動
バブーフは、同じ志を持つ同志たちと共に「平等派」と呼ばれる秘密結社を結成し、武力蜂起による社会主義政権の樹立を目指しました。彼らは、秘密裏にプロパガンダ活動を行い、民衆の支持を集めようとしました。「人民宣言」は、この「平等派」の活動の一環として執筆されたものであり、民衆に対して蜂起を呼びかけることを目的としていました。
「人民宣言」の内容
「人民宣言」は、1796年にバブーフによって執筆されたとされていますが、実際には他の平等派のメンバーも執筆に関与していた可能性があります。この宣言は、フランス革命のスローガンである「自由、平等、友愛」を踏まえながらも、真の平等は経済的な平等によってのみ達成されると主張し、私有財産制の廃止、土地の共有、労働の義務化などを訴えました。
「バブーフの陰謀」とその後の影響
「平等派」は、1796年5月に武力蜂起を計画していましたが、事前に発覚し、バブーフを含む主要メンバーは逮捕されました。バブーフは、翌年5月に裁判で死刑判決を受け、処刑されました。この事件は、「バブーフの陰謀」として知られています。
バブーフの思想は、彼の生前には広く受け入れられませんでしたが、その後、19世紀の社会主義思想に大きな影響を与えました。特に、マルクスやエンゲルスは、バブーフを「最初の共産主義者」と評価し、彼の思想を高く評価しました。