バジョットのイギリス憲政論の発想
バジョットのイギリス憲政論における「尊厳的部分」と「効率的部分」
バジョットのイギリス憲政論の中心には、「尊厳的部分」と「効率的部分」という二つの概念が存在します。彼は、19世紀後半のイギリス憲法を分析する上で、この二つの側面を明確に区別することの重要性を説きました。
「尊厳的部分」:国民感情への働きかけ
「尊厳的部分」とは、国民感情に訴えかけ、政治への関心を高める役割を担う側面を指します。バジョットは、当時のイギリスにおいて、国王や貴族院といった伝統的な権威が、国民の政治参加を促す上で重要な役割を果たしていると論じました。これらの機関は、必ずしも実質的な権力を行使するわけではありませんが、国民の政治に対する畏敬の念や愛着を育むことで、間接的に政治の安定に貢献していると考えたのです。
「効率的部分」:実際の政治運営
一方、「効率的部分」は、実際の政治運営を担う側面を指します。バジョットは、当時のイギリスにおいて、議会、特に庶民院が、立法や行政を監督する上で中心的な役割を果たしていると認識していました。彼は、選挙を通じて国民の意思を反映する庶民院こそが、効率的に政治を動かす原動力であると考えたのです。
二つの部分の相互作用とイギリス憲法の安定性
バジョットは、「尊厳的部分」と「効率的部分」が相互に作用することで、イギリス憲法が安定的に機能していると論じました。国民感情に訴えかける「尊厳的部分」は、人々に政治への関心を持たせ、政治システムへの支持を維持する役割を果たします。そして、その支持を背景に、「効率的部分」が実際の政治運営を円滑に進めることが可能になるのです。
バジョットの洞察と現代社会への示唆
バジョットのイギリス憲政論は、単に19世紀後半のイギリス憲法を分析しただけのものではありません。彼の洞察は、現代社会においても、政治システムの安定性と国民の政治参加の関係を考える上で重要な示唆を与えてくれます。