バジョットのイギリス憲政論の技法
バジョットの観察に基づく記述
バジョットは、イギリス憲政を論じる際、歴史的な文献や法律条文に基づくのではなく、当時の政治の現実における観察に基づいた記述を重視しました。彼は、憲法典のような成文憲法を持たないイギリスにおいて、実際の政治の運用こそが憲法の真の姿を映し出すと考えていました。
「尊厳的部分」と「効率的部分」の区分
バジョットは、イギリス憲政を分析する上で、「尊厳的部分」と「効率的部分」という独自の区分を導入しました。前者は、国民感情に訴えかける象徴的な側面、つまり君主や貴族院のような存在を指します。後者は、実際の政治運営を担う側面、つまり議会における政党政治や内閣の役割を指します。
「キャビネット政府」の提唱
バジョットは、当時のイギリス政治において、内閣が重要な役割を果たしていることを鋭く観察し、「キャビネット政府」という概念を提唱しました。彼は、多数党の党首を中心とした内閣が、議会に対して責任を負いながら、政策決定や行政執行を行うというイギリス独自の政治体制を明確に示しました。
平易で明瞭な記述
バジョットは、学術的な専門用語を避けた平易で明瞭な文体で記述しました。これは、一般の読者層にイギリス憲政の仕組みを理解してもらうことを目的としたためと考えられます。