バジョットのイギリス憲政論の原点
バジョットの思想的背景
ウォルター・バジョット(1826-1877)は、19世紀イギリスの政治学者・ジャーナリストであり、イギリスの政治体制に関する古典的名著『イギリス憲政論』(The English Constitution, 1867)を著したことで知られています。彼の思想は、当時のイギリスの政治・社会状況、そして彼が影響を受けた思想家や経験によって形成されました。
イギリスの政治・社会状況
バジョットが生きたヴィクトリア朝時代は、イギリスが産業革命の進展とともに経済的に繁栄し、大英帝国として世界中に勢力を拡大していた時代でした。一方で、国内では都市部への人口集中による貧困や社会不安、選挙権をめぐる政治改革運動など、様々な社会問題も顕在化していました。
このような時代背景の中で、バジョットはイギリスの政治体制が、伝統的な君主制や貴族制と、新興の資本家階級や労働者階級との間のバランスをどのように保ちながら、安定と発展を維持していくべきかを考察しました。
影響を受けた思想家
バジョットは、功利主義者のジェレミー・ベンサムやジョン・スチュアート・ミルなど、当時のイギリスを代表する思想家たちの影響を受けました。特に、ミルの自由主義思想や、政府の役割に対する功利主義的な見方は、バジョットの政治思想に大きな影響を与えました。
ジャーナリストとしての経験
バジョットは、政治学者であると同時に、The Economist誌の編集者を務めた経験を持つジャーナリストでもありました。彼は、政治や社会の出来事を現場で観察し、人々の意見に耳を傾けることを通じて、現実的な政治感覚を養いました。
ジャーナリストとしての経験は、バジョットの政治思想に、机上の空論ではなく、現実の政治状況を踏まえた実践的な視点を提供しました。彼は、イギリスの政治体制を、理想的な制度設計ではなく、歴史的に形成され、現実の中で機能しているシステムとして捉え、その実態を冷静に分析しようとしました。