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バジョットのイギリス憲政論に影響を与えた本

バジョットのイギリス憲政論に影響を与えた本

ウォルター・バジョットの『イギリス憲政論』に影響を与えた一冊:モンテスキュー著『法の精神』

ウォルター・バジョットの『イギリス憲政論』(1867年)は、イギリスの政治制度を説明した古典的名著です。バジョットは、イギリス憲法を、議院内閣制や立憲君主制といった「尊厳的部分」と、議会における実際の権力行使のあり方といった「効率的部分」の二つに分け、前者が後者を覆い隠すことで国民の政治参加意欲を高め、ひいては政治の安定に繋がると論じました。

バジョットのこの考察に影響を与えたものの一つとして、フランスの思想家モンテスキューの主著『法の精神』(1748年)が挙げられます。膨大な歴史的事例を博引旁証しながら政治体制を論じたこの書は、バジョットに限らず近代政治思想に多大な影響を与えましたが、『イギリス憲政論』からは特に二つの重要な影響を読み取ることができます。

第一に、『法の精神』における権力分立論の影響です。モンテスキューは同書において、自由の確保のためには権力を立法・行政・司法の三権に分立し、それぞれの権力を異なる機関に担わせる必要があると説きました。そして、イギリスの政治体制をこの権力分立論の体現であると高く評価しました。バジョットはモンテスキューの権力分立論を受け継ぎ、イギリスの政治制度を、「国王」「貴族院」「庶民院」という三つの機関がそれぞれ立法・行政・司法の役割の一部を担い、互いに抑制しあうことで権力の均衡を保っていると分析しました。

第二に、イギリスの政治体制に対する歴史的視点の影響です。モンテスキューは、『法の精神』において、個々の政治体制は、歴史的・地理的・社会的な文脈の中で形成されるという歴史主義的な立場を取っていました。バジョットもまた、イギリスの政治制度を、歴史の中で徐々に形成されてきた伝統的な制度として捉えました。彼は、イギリス憲法を成文憲法典によって明文化するのではなく、慣習法や先例といった歴史的な積み重ねによって発展させていくことの重要性を強調しました。

このように、『法の精神』は、『イギリス憲政論』におけるイギリス政治体制の分析方法や歴史観に大きな影響を与えました。バジョットは、モンテスキューの権力分立論をイギリスの文脈に適用することで、独自のイギリス憲法論を展開したと言えるでしょう。

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