バジョットのイギリス憲政論からの学び
バジョットの生きた時代と「イギリス憲政論」の位置付け
ウォルター・バジェット(Walter Bagehot、1826-1877)は、ヴィクトリア朝イギリスのジャーナリスト、政治評論家であり、経済学者としても知られています。彼は1867年に「イギリス憲政論(The English Constitution)」を出版しました。
「イギリス憲政論」の内容と特徴
「イギリス憲政論」は、イギリスの政治体制を、法文上の規定ではなく、現実の運用実態に基づいて分析した画期的な著作として知られています。バジョットは、イギリス憲法の特徴を「dignified part(尊厳的部分)」と「efficient part(効率的部分)」という二つの概念を用いて説明しました。
尊厳的部分と効率的部分
* **尊厳的部分**: 国民感情に訴えかけ、政治体制への忠誠心を維持する役割を担う部分。国王や貴族院などがこれにあたります。
* **効率的部分**: 実際の政治運営を担う部分。議会政治の中心となる庶民院や内閣などがこれにあたります。
バジョットは、イギリスの政治体制が安定して機能しているのは、この二つの部分がバランスよく組み合わされているためだと論じました。 国民は、伝統と権威を象徴する国王や貴族院に敬意を払いながらも、実際の政治は選挙で選ばれた庶民院と、そこから選ばれた大臣によって構成される内閣が行うという仕組みにより、政治への参加意識と安定の両立が実現していると考えたのです。
「イギリス憲政論」における議会政治の分析
バジョットは、議会政治、特に庶民院の役割について詳細な分析を行いました。彼は、選挙を通じて国民の意見を反映する機能、政府を監視する機能、立法を行う機能など、議会が担う多様な役割を明らかにしました。 また、政党政治の重要性についても言及し、政党間の競争が政治の活性化と安定に寄与していると論じています。
「イギリス憲政論」の影響
「イギリス憲政論」は、19世紀後半のイギリスにおける代表的な政治評論として、後の時代の政治学者や憲法学者にも大きな影響を与えました。 バジョットの著作は、イギリスの政治制度だけでなく、近代議会政治や立憲君主制のあり方を考える上でも重要な示唆を与えてくれます。