バクーニンの神と国家が扱う社会問題
神と国家
バクーニンの著作『神と国家』は、その名の通り、神という概念と国家という制度が人間社会に及ぼす影響について、痛烈な批判を加えた作品です。バクーニンは、無政府主義者の立場から、あらゆる形の権威と抑圧を否定し、人間の自由と平等を実現するために、神と国家の両者を克服すべきだと主張しました。
神の概念への批判
バクーニンは、神という概念を、人間の無力さや無知から生まれた幻想だと見なしました。彼によれば、人間は自然災害や病気、死など、自らコントロールできない力に直面したときに、それらを説明し、安心感を得るために、神という超越的な存在を創造したのです。そして、この神という概念は、教会や聖職者といった特権階級を生み出し、彼らが民衆を支配するための道具として利用されてきたとバクーニンは批判しました。
国家への批判
バクーニンは、国家を、支配階級が自らの権力と特権を維持するために作り出した暴力装置だと考えました。彼によれば、国家は、法律や警察、軍隊といった暴力機構を通じて、人々の自由を抑圧し、不平等な社会構造を維持しています。また、国家は、国民を戦争に駆り立て、互いに殺し合わせることで、支配階級の利益を守ろうとします。
教会と国家の共犯関係
バクーニンは、教会と国家は、互いに協力し合いながら、民衆を支配してきたと指摘しました。教会は、神の名の下に国家の権威を正当化し、人々に服従を強いてきました。一方、国家は、教会に特権を与え、その活動を保護してきました。このように、教会と国家は、互いに依存し合いながら、人間の自由と平等を阻害してきたのです。
人間の解放
バクーニンは、神と国家という二重の抑圧から解放され、真に自由で平等な社会を実現するためには、人間の理性と道徳に基づいた新しい社会秩序を構築する必要があると主張しました。彼は、国家や権力といった強制力に頼らない、自由な個人の連帯によって成り立つ無政府主義社会こそが、人間の解放を実現する唯一の道だと信じていました。