ハーバーマスの後期資本主義における正当化の諸問題を読む前に
ハーバーマスの人物像を理解する
ユルゲン・ハーバーマスは、現代ドイツを代表する哲学者の一人であり、「フランクフルト学派の第二世代」に位置付けられます。彼の思想は、マルクス主義や批判理論を継承しつつ、コミュニケーションを基軸とした独自の社会理論へと展開しています。
「公共圏」の概念を押さえる
ハーバーマスは初期の研究において、「公共圏」という概念を提唱しました。これは、国家権力や市場原理から自律した市民社会の空間であり、理性的な議論を通じて共通の意見を形成していく場を指します。
「コミュニケーション的理性」について学ぶ
ハーバーマスは、人間が相互理解を目指すコミュニケーションを通じて、理性的に合意形成を行うことができると考えました。
このコミュニケーションを支えるのが「コミュニケーション的理性」であり、権力や利害を超えて、互いの主張の妥当性を吟味する態度を意味します。
後期資本主義における問題意識を理解する
ハーバーマスは、高度に発展した資本主義社会において、経済システムと行政システムが肥大化し、生活世界を植民地化していくと批判しました。
この「システムの植民地化」は、人々の価値観や規範を画一化し、コミュニケーションを阻害する要因となります。
本書のテーマを把握する
「後期資本主義における正当化の諸問題」は、このような問題意識を背景に、現代社会における政治的秩序の正当化の根拠を問う著作です。
ハーバーマスは、伝統的な正当化の根拠が失われた現代において、コミュニケーション的理性に基づく新しい正当化の概念を提示しようと試みます。