## ハートの法の概念の美
### ハートの法の概念とは?
「ハートの法」は、法哲学者H.L.A.ハートが提唱した法概念です。彼の著書『法の概念』(The Concept of Law)の中で展開され、近代法実証主義の代表的な理論として知られています。この概念は、従来の法実証主義が抱えていた問題点を克服し、より洗練された法の捉え方を提示した点で画期的でした。
### ハートの法概念の特徴 – ルールへの着目
ハートの法概念の中心には、「ルール」への着目があります。彼は、法を単なる命令や強制ではなく、社会生活を規律する「ルール」の体系として捉えました。そして、このルールには、人々の行動を外部的に拘束するだけでなく、人々の内面的な承認や受容を伴う「義務」という側面があることを強調しました。
### 一次ルールと二次ルールの区別
ハートは、法を構成するルールを「一次ルール」と「二次ルール」の二つに分類しました。一次ルールは、人々の行動を直接的に規制するルールであり、例えば、殺人や窃盗を禁じる刑法の規定などが該当します。一方、二次ルールは、一次ルールを創設、変更、適用、または裁定するためのルールです。例えば、法律の制定手続きを定めた憲法の規定や、裁判の手続きを定めた民事訴訟法などが二次ルールに当たります。
### 二次ルールのもたらす法的秩序の安定性
ハートは、二次ルールの存在によって、一次ルールのみからなる単純な社会よりも、法的秩序がより安定的に維持されると考えました。二次ルールによって、一次ルールの内容が明確化され、新たな社会状況に対応したルールの創設や変更が可能となり、また、ルールの違反に対する公正な裁定が期待できるようになるからです。
### ハートの法概念における「承認の規則」
二次ルールの中でも特に重要なのが、「承認の規則」(rule of recognition)です。これは、ある社会においてどのルールが法として有効であるかを最終的に決定するルールです。承認の規則は、成文憲法のように明文化されていることもあれば、慣習法のように明文化されていないこともあります。ハートは、承認の規則が社会の中で実際に受け入れられ、機能していることをもって、その社会に法体系が存在すると言えるとし、法の有効性を説明しました。