ハートの法の概念の対極
法の支配
「ハートの法」は、法が人々の内面に根ざした道徳や共感から自然発生的に生まれるべきだとする考え方です。一方、「法の支配」は、社会秩序を維持するために、明確な規則と手続きに基づいた法体系が不可欠であるとする、対照的な概念です。
プラトン『国家』における法の支配
古代ギリシャの哲学者プラトンは、対話篇『国家』の中で、法の支配の重要性を説いています。プラトンは、個人の道徳観や感情は主観的で信頼性に欠けるため、社会秩序を維持するためには、客観的で普遍的な法体系が必要だと考えました。彼は、法の支配こそが、恣意的な支配や無秩序から社会を守る唯一の道であると主張しました。
ホッブズ『リヴァイアサン』における法の支配
17世紀のイギリスの哲学者トーマス・ホッブズもまた、主著『リヴァイアサン』において、法の支配の重要性を強調しました。ホッブズは、自然状態における人間は、自己保存のためにあらゆる手段を尽くすため、社会は「万人の万人に対する闘争」状態にあるとしました。彼は、このような無秩序な状態から脱却するためには、絶対的な権力を持った主権者によって、明確な法と秩序が制定・執行されなければならないと主張しました。
モンテスキュー『法の精神』における法の支配
18世紀のフランスの思想家モンテスキューは、著書『法の精神』の中で、権力分立の必要性を説きました。彼は、個人の自由を守るためには、立法権、行政権、司法権を分離し、それぞれの権力が相互に抑制し合う必要があると考えました。モンテスキューは、法の支配こそが、権力の濫用を防ぎ、個人の自由を保障する上で不可欠であると主張しました。