ハンティントンの文明の衝突の関連著作
サミュエル・P・ハンティントン著「文明の衝突と世界秩序の再編」
1996年に出版されたハンティントン自身の著作。冷戦後の世界において、イデオロギー対対立に代わって文明間の対立が主要な紛争要因になると主張し、大きな反響を呼びました。本書では、歴史、文化、宗教を基盤とした7つまたは8つの主要な文明(西洋、儒教、日本、イスラム、ヒンドゥー、スラヴ・正教、ラテンアメリカ、そして恐らくアフリカ)を提示し、これらの文明間の相互作用と摩擦が21世紀の国際政治を形作ると論じています。
フランシス・フクヤマ著「歴史の終わりと最後の人間」
1992年に出版された本書は、ハンティントンの文明の衝突論とは対照的な見解を提示しています。フクヤマは、冷戦の終結はイデオロギーの闘争の終焉を意味し、リベラルな民主主義が「人類の統治形態の進化の終着点」となるだろうと主張しました。彼は、歴史の進歩は終わりに近づいており、将来的にはイデオロギー的な対ではなく、経済や技術をめぐる競争が中心となると予測しました。
エドワード・W・サイド著「オリエンタリズム」
1978年に出版された本書は、西洋が東洋をどのように歪曲して表象してきたかを批判的に分析しています。サイドは、西洋の学術、文学、芸術における東洋表象は、西洋の優位性を強調し、東洋を劣等で静的な存在として描くことで、西洋の植民地支配を正当化するために利用されてきたと主張しました。ハンティントンの文明の衝突論は、西洋とイスラム文明を対立軸として描く点で、サイドが批判するオリエンタリズムの視点を継承しているとの指摘があります。
アマルティア・セン著「アイデンティティと暴力」
2006年に出版された本書で、センは、人間は単一のアイデンティティに還元することはできず、複数のアイデンティティを併せ持つ存在であると主張しています。彼は、ハンティントンが文明を単一的な枠組みで捉え、文明間の対立を過度に強調していると批判し、文化や文明は固定的なものではなく、常に変化し、相互に影響し合っていると論じています。