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ハンティントンの文明の衝突の対極

## ハンティントンの文明の衝突の対極

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「文明の衝突」への批判

サミュエル・P・ハンティントンの著した「文明の衝突」は、冷戦後の世界において文明間の対立が主要な紛争の原因となるという議論で、国際政治学に大きな影響を与えました。しかし、出版当初からその主張に対する批判は少なくありませんでした。

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「文明の衝突」の対極に位置する議論

ハンティントンの主張に真っ向から対立する代表的な議論として、以下のようなものが挙げられます。

* **グローバリゼーションによる文化の均質化**: これは、グローバリゼーションの進展によって世界中で文化の交流が活発化し、結果として文化的な差異が薄れていくという考え方です。ハンティントンが主張するような文明間の対立は、このような均質化の過程において発生する摩擦に過ぎず、本質的なものではないとされます。
* **国民国家の重要性の低下**: ハンティントンは、文明を人々のアイデンティティの最も重要な要素として捉えていますが、国家や民族といったより小さな集団への帰属意識を重視する立場からは、文明間の対立は現実的な脅威として認識されません。グローバリゼーションの影響によって国民国家の重要性が低下していく中で、人々のアイデンティティはより流動的かつ多層的になり、単一の文明に帰属する意識は薄れていくとされます。
* **普遍的な価値観の広がり**: これは、人権や民主主義といった普遍的な価値観が世界中に広まっていることを根拠に、文明間の対立の可能性を否定する考え方です。ハンティントンは文明間の価値観の差異を強調しますが、このような普遍的な価値観の浸透は、異なる文明間の相互理解と協調を促進すると考えられます。

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具体的な著作

これらの「文明の衝突」へのアンチテーゼとなる考え方は、特定の著作の中で明確に体系化されているわけではありません。しかし、「文明の衝突」に対する批判として、多くの学者やジャーナリストによって様々な形で提示されてきました。例えば、エドワード・サイードは著書「オリエンタリズム」の中で、西洋が東洋に対して抱く偏見やステレオタイプを批判し、ハンティントンの文明論もこのような西洋中心主義の延長線上にあると指摘しました。また、フランシス・フクヤマは「歴史の終わり」の中で、自由民主主義が人類史の到達点であると主張し、イデオロギーの対立が終焉した世界においては、ハンティントンが危惧するような文明間の対立は起こりえないとしました。

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