ハロッドの動態経済学序説を読む

## ハロッドの動態経済学序説を読む

ロイ・F・ハロッドによって1939年に発表された「動態経済学序説」は、経済成長の分析に焦点を当てた経済学の著作です。ケインズの静的な経済理論を動学化し、時間経過に伴う経済の動きを分析しようとした点が画期的でした。

ハロッドは、資本蓄積、人口増加、技術進歩という3つの要素が経済成長を決定すると考えました。彼は、これらの要素が均衡状態において特定の割合で成長する場合にのみ、完全雇用が維持され、安定的な経済成長が可能になると主張しました。

ハロッドは、完全雇用を維持するために必要な経済成長率を「保証成長率」と呼びました。この成長率は、資本の限界効率と貯蓄率によって決定されます。

現実の経済成長率は、企業の投資決定によって決まります。企業は、将来の需要見通しに基づいて投資を決定するため、現実の成長率は必ずしも保証成長率と一致するとは限りません。

ハロッドは、現実の成長率が保証成長率を上回ると、インフレーションが発生し、下回るとデフレーションが発生すると指摘しました。さらに、これらの調整プロセスは不安定性を増幅させる傾向があり、経済は完全雇用から乖離する可能性があると主張しました。

ハロッドは、政府が財政政策や金融政策を通じて経済活動を調整し、現実の成長率を保証成長率に近づけるべきだと主張しました。

「動態経済学序説」は、経済成長理論に多大な影響を与え、その後の経済学者たちによって発展させられました。特に、エブシー・ドーマーはハロッドのモデルを数学的に洗練させ、今日「ハロッド＝ドーマーモデル」として知られるようになりました。

「動態経済学序説」は、今日の経済状況にも通じる重要な視点を提供しています。特に、経済成長の不安定性、政府の役割、長期的な視点の重要性など、現代経済学においても重要なテーマを扱っています。