## ハロッドの動態経済学序説の構成
ハロッドの『動態経済学序説』(Towards a Dynamic Economics)は、全11章で構成されています。それぞれの章の内容を詳しく見ていく前に、まずは全体の構成を把握しておきましょう。
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序論
まず、本書の目的と構成、そして用いられる分析手法について概説されています。静態経済学では扱いきれない、動態的な経済分析の必要性を説き、そのための基礎的な枠組みを提示しています。
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第1章 動態経済学における基本概念
この章では、本書全体を通して用いられる主要な概念が定義されます。特に、貯蓄、投資、資本などの定義が詳しく説明され、その後の分析の基礎となります。
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第2章 完全雇用を維持するための保証された成長率
本章では、本書の中核となる「保証された成長率」の概念が導入されます。完全雇用を維持するために必要な投資水準と、その投資を生み出すための経済成長率の関係が分析されます。
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第3章 保証された成長率と自然成長率
ここでは、保証された成長率に加えて、「自然成長率」という新たな概念が登場します。技術進歩や労働人口増加などを考慮した、経済が潜在的に成長できる率であり、保証された成長率との比較を通して、経済の安定性について考察されます。
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第4章 不安定性原理
保証された成長率と自然成長率が一致しない場合、経済は不安定な状態に陥る可能性があることが示されます。この「不安定性原理」は、ハロッドモデルの重要な結論の一つです。
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第5章 価格変化の影響
本章では、これまで無視されていた価格変化が導入されます。物価水準の変化が、貯蓄と投資のバランス、ひいては経済成長にどのような影響を与えるのかが考察されます。
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第6章 外国貿易の影響
ここでは、閉鎖経済を前提としてきた分析に、外国貿易が導入されます。輸出と輸入が、国内経済の成長経路にどのような影響を与えるのかが分析されます。
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第7章 変動する人口増加率の影響
本章では、人口増加率の変動が経済成長に及ぼす影響について考察されます。人口増加率の変化が、自然成長率や保証された成長率に影響を与えるプロセスが分析されます。
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第8章 経済発展の循環
ここでは、これまでの分析を踏まえ、経済発展の循環的な動きについて考察されます。景気循環のメカニズムを、ハロッドモデルの枠組みの中で説明しようと試みられます。
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第9章 動態経済学における諸問題
本章では、動態経済学の分析において重要な、いくつかの問題が取り上げられます。特に、時間要素の扱い方や不確実性の問題について、考察が深められます。
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第10章 動態理論と経済政策
ここでは、ハロッドモデルが政策的に持つ意味合いについて考察されます。完全雇用を維持し、経済成長を促進するための政策手段について、具体的な提案がなされます。
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第11章 動態経済学の将来
最終章では、動態経済学の今後の発展方向について展望が語られます。ハロッド自身の考えに基づき、将来の研究課題や可能性が提示されます。