## ハロッドの動態経済学序説の思索
### ハロッドの動態経済学序説における主要な問題意識とは何だったのでしょうか?
ハロッドは、ケインズの静学的な短期分析を時間軸に沿って展開し、経済の長期的な成長経路を分析しようと試みました。彼は、完全雇用が維持されるような経済成長率(保証成長率)と、投資家の期待に基づく実際の経済成長率(現実成長率)の間に均衡が成立する条件を探求しました。
### ハロッドの分析における「保証成長率」と「現実成長率」の概念を解説してください。
* **保証成長率(Warranted Growth Rate):** これは、完全雇用を維持するために必要な経済成長率です。この成長率においては、投資家は現在の投資水準に満足し、将来に向けても投資意欲を維持します。つまり、経済は均衡状態にあり、設備の過不足や労働力の遊休は発生しません。
* **現実成長率(Actual Growth Rate):** これは、投資家の期待に基づいて実際に実現される経済成長率です。現実の経済では、投資家の期待や行動は様々な要因に影響され、必ずしも保証成長率と一致するとは限りません。
### ハロッドのモデルにおける不安定性の問題について説明してください。
ハロッドのモデルは、現実成長率が保証成長率から乖離した場合、経済が不安定な状態に陥る可能性を示唆しています。
* もし現実成長率が保証成長率を上回ると、設備不足や労働力不足が発生し、更なる投資が促進されます。この投資の増加は現実成長率をさらに押し上げ、経済はインフレーションを伴う**過剰な好況**に陥る可能性があります。
* 逆に、現実成長率が保証成長率を下回ると、設備の余剰や失業が発生し、投資は抑制されます。投資の減少は現実成長率をさらに低下させ、経済は**慢性的な不況**に陥る可能性があります。
ハロッドはこのような不安定性を是正するために、政府による有効需要の調整の必要性を主張しました。