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ハロッドの動態経済学序説の分析

## ハロッドの動態経済学序説の分析

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背景

ロイ・F・ハロッドの『動態経済学序説』(1939)は、経済成長の分析に革新をもたらした重要な著作です。ケインズの『雇用・利子および貨幣の一般理論』(1936)から多大な影響を受け、短期的な景気循環ではなく、長期的な経済成長に焦点を当てています。当時の経済学は静的な均衡分析が主流でしたが、ハロッドは動学的な視点を取り入れ、時間経過に伴う経済の変化を分析しました。

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主要な概念

ハロッドの分析において中心的な役割を果たすのが、以下に示す3つの成長率です。

* **現実成長率(G)**:これは、実際の産出量の増加率を表します。
* **保証成長率(Gw)**:これは、完全雇用を維持するために必要な産出量の増加率です。
* **自然成長率(Gn)**:これは、人口増加率や技術進歩率といった要素によって制約される、経済が達成可能な最大成長率です。

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ハロッド=ドーマーモデル

ハロッドのモデルは、後にエブセイ・ドーマーによって発展させられ、**ハロッド=ドーマーモデル**として知られるようになりました。このモデルでは、投資が経済成長の鍵を握るとされています。企業の投資意欲は、将来の需要に対する期待に左右されます。もし企業が将来の需要増加を見込めば、積極的に投資を行い、生産能力を増強します。逆に、将来の需要が不透明な場合は、投資を控え、生産能力の拡大も抑制されます。

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不安定性と政策的含意

ハロッドの分析は、資本主義経済の不安定性を浮き彫りにしました。現実成長率が保証成長率を上回ると、完全雇用が達成され、経済は好景気に沸きます。しかし、この状態は持続不可能です。完全雇用下では労働力が不足し、賃金が上昇、インフレーションが発生します。企業の投資意欲は減退し、現実成長率は低下します。

逆に、現実成長率が保証成長率を下回ると、失業が発生し、経済は不況に陥ります。この状態もまた、不安定です。失業の増加は、消費の減退、企業収益の悪化をもたらし、さらなる投資の抑制、現実成長率の低下につながります。

ハロッドは、このような経済の不安定性を克服するために、政府が積極的な役割を果たす必要があると主張しました。具体的には、財政政策や金融政策を通じて、総需要を調整し、現実成長率を保証成長率に近づけることが重要であるとしました。

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