## ハロッドの動態経済学序説と人間
ハロッドの動態経済学序説における人間の位置づけ
ハロッドの動態経済学序説は、経済成長の要因と結果を分析する上で、人間の行動を明示的にモデル化するのではなく、経済システムの内部構造とダイナミクスに焦点を当てています。
ハロッドは、貯蓄、投資、生産性の関係性を分析することで、経済が均衡成長経路上から逸脱する可能性、そしてその結果生じる景気循環について説明しようとしました。 この理論において、人間の行動は主に以下の3つの要素に集約されて考慮されています。
* **貯蓄率:** 人々は所得の一部を貯蓄すると仮定されていますが、その比率は外生的に与えられ、理論内部で決定されるわけではありません。
* **資本係数:** これは生産に必要な資本の量を表し、技術水準によって決定されるとされます。ここでも、技術進歩のメカニズムや人間の創意工夫については深く掘り下げられません。
* **労働供給:** ハロッドは完全雇用を前提としており、労働供給は人口増加率によって外生的に決定されると考えられています。
人間の行動への言及の少なさ
ハロッドの分析は、経済成長の不安定性を理解する上で重要な洞察を提供する一方、人間の行動を単純化しているという批判もあります。
例えば、貯蓄率は所得水準、将来の期待、金利などの要因によって影響を受ける可能性がありますが、ハロッドのモデルではこれらの要素は考慮されていません。
また、技術進歩は外生的に与えられていますが、実際には人間の創意工夫や研究開発への投資によって促進されるものです。
さらに、完全雇用の前提は現実的ではなく、労働市場における需給の不均衡や失業の問題を無視しています。
結論
ハロッドの動態経済学序説は、経済成長のダイナミクスを理解するための重要な枠組みを提供するものの、人間の行動については限定的にしか考慮されていません。