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ハロッドの動態経済学序説が扱う社会問題

## ハロッドの動態経済学序説が扱う社会問題

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不安定な経済成長と完全雇用の両立

ハロッドは、経済成長の過程が本質的に不安定なものであると論じました。彼のモデルにおいて、完全雇用を維持できる均衡成長経路はナイフエッジのような極めて不安定なものであり、現実の経済がそこに留まり続けることは非常に困難です。

わずかなズレが累積的に増幅され、経済は完全雇用から乖離し、慢性的なインフレーションやデフレーションに見舞われます。この不安定性は、投資決定における企業家の「動物的な精神」と技術進歩の不確実性によってさらに増幅されます。

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経済成長と所得分配の相互作用

ハロッドは、経済成長率と所得分配の間には密接な関係があると指摘しました。貯蓄率は所得分配構造に影響され、その貯蓄率が投資を決定づけることで経済成長率が決まります。

しかし、この関係性は社会全体の厚生を必ずしも向上させる方向に働くわけではありません。例えば、富裕層が多くの所得を占める社会では、貯蓄率は高くなる可能性があります。しかし、高すぎる貯蓄率は需要不足を引き起こし、経済成長を阻害する可能性があります。

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政府による経済の安定化

ハロッドは、不安定な資本主義経済を安定化させるためには政府の積極的な役割が不可欠であると主張しました。彼のモデルでは、政府は財政政策や金融政策を通じて総需要を調整し、完全雇用と持続可能な経済成長を達成することができます。

具体的には、政府は公共投資や減税によって有効需要を刺激することで、デフレギャップを埋め、経済を完全雇用経路に近づけることができます。逆に、インフレギャップが生じる場合には、増税や公共投資の削減によって需要を抑制する必要があります。

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国際貿易と経済成長

ハロッドは、国際貿易が経済成長に与える影響についても考察しました。彼のモデルでは、国際貿易は資源配分を効率化し、技術革新を促進することで、経済成長を促進する可能性があります。

しかし、ハロッドは同時に、国際貿易が国内経済に不安定性をもたらす可能性についても指摘しました。例えば、輸出の急減や輸入の急増は、国内の生産と雇用に悪影響を与える可能性があります。

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結論

ハロッドの動態経済学序説は、経済成長のダイナミズムと課題を深く掘り下げ、資本主義経済における政府の役割について重要な示唆を提供しています。彼の分析は、今日でも経済学者や政策立案者にとって重要な教訓を与え続けています。

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