## ハロッドの「動態経済学序説」の美
### 1. 明確さと厳密さの追求における美しさ
ハロッドの「動態経済学序説」は、経済成長の複雑な問題に対して、驚くほど明確かつ厳密な分析を提供しています。数式を多用しながらも、その論理展開は明快で、読者はハロッドの思考過程を容易に追うことができます。特に、均衡成長経路から外れた場合に経済が不安定化していく様子を、明確な数式モデルで示した点は、画期的でした。
### 2. 単純化されたモデルが持つ力強さ
ハロッドは、貯蓄率、資本係数、人口増加率といった少数の変数を用いて、経済成長のダイナミズムを捉えることに成功しました。単純化されたモデルは、一見すると現実経済の複雑さを捉えきれていないようにも見えます。しかし、そのシンプルさ故に、成長経路の安定性という本質的な問題に焦点を当て、経済成長のメカニズムに対する深い洞察を提供することに成功しています。
### 3. 動学分析の先駆的な役割
当時の経済学は静学分析が主流でしたが、ハロッドは「動態経済学序説」において、時間経過とともに変化する経済変数を明示的に考慮した動学分析を展開しました。これは、経済学に新たな分析手法を導入する先駆的な試みであり、後の経済成長理論の発展に大きな影響を与えました。
### 4. 経済政策への示唆
ハロッドのモデルは、経済成長の安定性条件を明確に示しており、政府による経済政策の必要性を示唆しています。均衡成長を達成するためには、貯蓄率や人口増加率などを適切に調整する必要があることを示し、経済政策の重要性を改めて認識させました。