## ハクスリーのすばらしい新世界 の光と影
社会の安定と幸福
「すばらしい新世界」では、科学技術の発展により、社会は極度に安定化しています。人々は生まれる前から社会的な役割が決められ(カースト制度)、それぞれが自分の役割に満足し、疑問を抱くことなく生活を送っています。
人々は「ソーマ」と呼ばれる薬物によって、あらゆる不快な感情を抑圧し、常に幸福を感じることができます。また、労働も娯楽も高度にシステム化されており、退屈や不安を感じることはありません。
個性の抹殺と自由の喪失
しかし、この安定と幸福は、個性の抹殺と自由の喪失という大きな代償の上に成り立っています。人々は画一的な価値観を植え付けられ、芸術、文学、歴史、哲学といった「役に立たない」とされるものへの関心は完全に失われています。
恋愛や家族といった制度も廃止され、人々は自由恋愛と刹那的な快楽にのみ生きています。 自己犠牲や献身といった、人間的な感情も存在しません。
管理された幸福への疑問
作中では、文明社会から隔離された「野蛮人保留地」から来たジョンという青年が登場します。彼は「すばらしい新世界」のシステムに強い反発を覚えます。
ジョンは、真の幸福は、苦しみや悲しみといった負の感情も含めて、人間らしい感情を経験し、自分で選択し、責任を負うことによってのみ得られると主張します。
彼の存在は、「すばらしい新世界」のシステムに疑問を投げかけ、真の幸福とは何か、人間らしさとは何かを問いかける存在となっています。