## ハイデガーの存在と時間の発想
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存在の問い
ハイデガーの主著『存在と時間』は、西洋哲学の伝統において見失われてきた「存在」そのものを問い直すことを試みとしています。ハイデガーは、我々が日頃当たり前のように用いている「存在」という言葉の意味が、実は自明ではなく、深く考察する必要があると考えていました。
従来の哲学は、存在者をその属性や関係性によって理解しようとしてきましたが、存在そのものを問うことはなかったとハイデガーは批判します。彼は、存在者を理解するためには、まず存在そのものを理解しなければならないと考えました。
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現存在と世界内存在
ハイデガーは、存在を問うための独自の出発点として「現存在」(Dasein)という概念を導入します。現存在とは、他のあらゆる存在者と区別される、世界内存在としての人間のあり方を指します。
人間は、単なる生物学的存在ではなく、常に世界と関わり合いながら存在しています。世界内存在である人間は、常に何かに関心を持ち、道具を用い、他者と関係性を築きながら生きています。ハイデガーは、このような世界内存在としての具体的な人間のあり方を分析することによって、存在そのものへの理解を深めようとしました。
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時間性と歴史性
ハイデガーは、現存在の分析を通して、人間の存在が本質的に時間的なものであることを明らかにしました。人間は、常に過去から現在を生きて未来へと向かう存在です。
また、ハイデガーは、現存在が歴史的に規定されていることを強調しました。我々の思考や行動は、過去の伝統や文化、そして他者との関係性によって大きく影響を受けています。
ハイデガーは、時間性と歴史性を分析することによって、人間の存在が有限でありながらも、常に可能性に向かって開かれていることを示そうとしました。