## ハイデガーの存在と時間の主題
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存在とは何か?
『存在と時間』は、伝統的な形而上学が「存在」の意味を忘却してきたと批判し、改めて「存在」そのものを問うことから始まります。ハイデガーは、存在を単なる「もの」として捉えるのではなく、むしろ「存在すること」の可能性、つまり「現存在」(Dasein)として理解しようとします。
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現存在の分析:世界内存在
ハイデガーは、人間を「現存在」として特徴付けます。現存在は、単に世界に存在するのではなく、「世界内存在」として、常に世界と関わり合いながら存在しています。彼は、現存在を理解するために、「世界内存在の構造」を分析します。
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現存在の構造:世界-内-存在
「世界-内-存在」は、現存在が世界と不可分に結びついていることを示す概念です。「世界」とは、単なる客観的な事物ではなく、現存在が意味や価値を賦与する場を意味します。「内」は、現存在が世界に関わる様態を表し、「存在」は、世界に関わることを通じて、自らを規定していく現存在自身の可能性を指します。
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現存在のあり方:不安、気遣い、理解
ハイデガーは、現存在のあり方を特徴づけるものとして、「不安」、「気遣い」、「理解」といった概念を用います。「不安」は、現存在が自身の存在可能性に直面したときに感じる根源的な感情です。「気遣い」は、現存在が世界と関わり合い、自身の可能性を実現しようとする様態を指します。「理解」は、現存在が自身の存在可能性を解釈し、世界の中で意味を見出す能力を意味します。
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時間性:現存在の根源
ハイデガーは、現存在の根源を「時間性」に見出します。時間性は、過去・現在・未来という時間概念ではなく、現存在が「先駆」(未来への先駆)、「忘却」(過去からの飛躍)、「現在」(現在における企投)という三つの時間的エクスタシスにおいて存在することを意味します。時間性において、現存在は自身の存在可能性に向かって開かれ、歴史的な存在となります。