ノージックのアナーキー・国家・ユートピアを読む
ノージックの主張
ロバート・ノージックの『アナーキー・国家・ユートピア』(1974年)は、20世紀の政治哲学における最も影響力のある著作の一つです。この書は、ジョン・ロールズの『正義論』(1971年)に対する批判的応答として書かれ、リバタリアニズムの擁護を展開しています。ノージックは、個人の権利を重視し、国家の役割を最小限に抑えるべきだと主張します。
最小国家論
ノージックは、個人の権利を侵害しない最小限の国家、すなわち「夜警国家」の存在を正当化します。夜警国家は、暴力、窃盗、詐欺から個人を守るために限定された機能を果たします。ノージックによれば、これ以上の国家の介入は、個人の権利を侵害するものであり、不正であると主張します。
所有権の理論
ノージックは、個人が自らの労働と所有物に対して自然権としての権利を持つと主張します。彼は、「エンタイトルメント理論」と呼ばれる分配の正義の理論を展開します。この理論は、個人が所有物を取得し、移転するための正当な手続きに焦点を当てています。ノージックによれば、所有物の取得と移転が正当な手続きに従っている限り、その結果生じる分配は、たとえそれが不平等であっても、正義であるとされます。
ユートピアへの批判
ノージックは、国家が個人の自由を制限することによってユートピアを実現しようとする試みを批判します。彼は、そのような試みは、個人の権利を侵害し、全体主義につながると主張します。ノージックは、個人が自由に選択し、独自の生活を追求できる社会を支持します。
影響と批判
『アナーキー・国家・ユートピア』は、リバタリアニズムの古典的な著作とみなされており、政治哲学、倫理学、経済学など、幅広い分野に影響を与えてきました。しかし、この書は、その主張の根拠、所有権の理論、分配の正義の概念など、多くの点で批判されています。