## ノージックのアナーキー・国家・ユートピアの感性
ノージックの自由至上主義
ノージックの『アナーキー・国家・ユートピア』は、徹底した個人主義と自由主義の立場から書かれた政治哲学書です。彼は、個人の権利を最大限に尊重し、国家の役割を最小限に抑えるべきだと主張しました。この立場は、しばしば「ミニマル国家」あるいは「夜警国家」と呼ばれます。
個人の権利と所有の正当性
ノージックは、ジョン・ロックの自然権論の影響を強く受けています。彼は、すべての人間は生まれながらにして、生命、自由、財産に対する不可侵の権利を持っていると主張します。
ノージックは、特に所有の権利を重視し、それを正当化するために「エンタイトルメント理論」を展開しました。この理論は、以下の3つの原則から成り立っています。
1. **取得の正義**: 正当な方法で未所有のものを取得することは、所有権の正当な根拠となる。
2. **移転の正義**: 正当な所有者から自発的な取引によって財産を移転された場合、その財産に対する所有権は正当化される。
3. **是正の正義**: 過去の不正によって不当に取得された財産は、正当な所有者に返還されるべきである。
ノージックは、このエンタイトルメント理論に基づき、再分配を伴う福祉国家を批判しました。彼は、福祉国家による富の再分配は、たとえそれが貧困層の生活水準を向上させるためであっても、個人の所有権に対する侵害であり、不正であると主張したのです。
国家の役割と正当性
ノージックは、国家の存在を完全に否定する無政府主義者ではありませんでした。彼は、個人の権利を保護し、契約の履行を保証するために、最小限の機能を持つ国家が必要であると主張しました。
しかし、ノージックは、国家の権力は必要最小限に抑えられるべきであり、個人の自由を侵害するような活動は厳しく制限されるべきだと考えました。彼は、福祉国家やパターナリズム的な政策を批判し、個人が自らの選択と責任によって生きる自由を擁護しました。
ノージックの主張は、福祉国家の隆盛に対する反発として、特に新自由主義の台頭とともに注目を集めました。彼の思想は、現代の政治哲学における重要な論点であり続けています。