## ノージックのアナーキー・国家・ユートピアのメカニズム
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自然状態
ノージックは、ロックに倣い、個人に基本的な権利を認める「自然状態」を出発点とします。 人々は、暴力や窃盗から身を守る権利、所有物を自由に使う権利、契約を結ぶ権利などを持っています。 しかし、自然状態では、これらの権利を侵害する者が後を絶ちません。 なぜなら、権利侵害に対する客観的な判断基準や、それを執行する機関が存在しないからです。
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相互保護協会
権利を効果的に保護するために、人々は「相互保護協会」を形成します。 これは、会員がお互いの権利を保護し合うための私的な組織です。 例えば、AさんがBさんに襲われた場合、Aさんは協会の他のメンバーに助けを求めることができます。 相互保護協会は、独自のルールや裁判手続きを持ち、違反者には制裁を加えます。
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支配的な保護協会
複数の相互保護協会が競合する状態になると、衝突や紛争が起こりやすくなります。 そのため、次第に最も強力な協会が他の協会を吸収・統合し、最終的には単一の「支配的な保護協会」が地域を支配するようになります。 支配的な保護協会は、事実上の政府としての機能を果たすようになりますが、あくまで私的な組織であり、国家ではありません。
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最小国家への移行
支配的な保護協会は、効率性と安定性を高めるために、以下の二つの重要な変化を遂げます。
1. **暴力の独占:** 協会は、自衛以外のいかなる暴力も禁止し、自らが暴力の行使を独占します。 これは、私的な復讐行為や抗争を抑制し、社会全体の安全を確保するためです。
2. **普遍的な保護:** 協会は、会員以外の人々に対しても、一定の保護を提供するようになります。 これは、会員と非会員の間で紛争が起こった場合に、客観的な立場から仲裁を行うためです。
これらの変化を経て、支配的な保護協会は、実質的に「最小国家」へと移行します。
**注記**: ノージックは、最小国家以上の国家、すなわち福祉国家や再分配政策を行う国家の正当性を否定します。 しかし、本稿では、メカニズムのみに焦点を当て、その是非については触れません。
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