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ノージックのアナーキー・国家・ユートピアに影響を与えた本

ノージックのアナーキー・国家・ユートピアに影響を与えた本

ジョン・ロールズの「正義論」

ロバート・ノジックスの「アナーキー・国家・ユートピア」は、20世紀の政治哲学における最も重要な著作の一つであり、特にジョン・ロールズの「正義論」への直接の回答として書かれたものです。ノジックス自身も序文で認めているように、ロールズの著作はノジックスの思考に大きな影響を与え、彼自身の自由至上主義的な正義論の構築へと導きました。

ロールズの正義論:平等主義的リベラリズムの金字塔

「正義論」でロールズは、「無知のヴェール」という思考実験を用い、人々が自己の立場や能力、価値観を知らない「原初状態」において、どのような社会契約を結ぶかを考察します。ロールズによれば、人々はリスク回避的に考え、最も不利な立場の人々にとっても許容できるような正義の原則を選択すると主張します。

これが有名な「差異の原則」であり、社会的不平等は、最も不遇な人々の利益に資する場合にのみ正当化されるとするものです。ロールズは、平等主義的なリベラリズムの立場から、国家による積極的な再分配や社会福祉政策の必要性を主張しました。

ノジックスの批判:「所有権」を軸とした自由の擁護

ノジックスは、「アナーキー・国家・ユートピア」において、ロールズの正義論を正面から批判します。彼は、ロールズの「差異の原則」は、個人の権利を侵害し、国家による過度な介入を招くと主張します。

ノジックスは、ロールズの分配正義論に対して、個人の「所有権」を重視する「エンタイトルメント理論」を対置します。彼は、個人が正当に所有物を取得し、自由な交換を通じて所有物を移動させる限り、その結果はどのようなものであっても正義であると主張します。

ノジックスは、国家の役割を「夜警国家」に限定し、個人の自由と権利を最大限に尊重する最小国家論を展開しました。彼は、ロールズの正義論が「結果」の平等に焦点を当てるのに対し、「過程」の正義を重視し、自由な市場メカニズムによる資源配分を擁護しました。

影響と意義:現代のリバタリアニズムの源流

「アナーキー・国家・ユートピア」は、ロールズの「正義論」への批判として書かれましたが、単なる批判を超えて、独自の自由至上主義的な正義論を提示した点で、現代政治哲学に大きな影響を与えました。

ノジックスの所有権を重視する立場は、その後のリバタリアニズムの思想的な源流となり、市場原理主義や小さな政府を主張する論者たちに大きな影響を与えました。

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